第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P30

2016年5月29日(日) 11:10 〜 12:10 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-30-2] 慢性期脳卒中患者における有酸素運動中の呼吸循環代謝応答

トレッドミル歩行とサイクルエルゴメーター駆動の比較

高山雄介1, 岡田誠1, 和田智弘1, 内山侑紀2, 道免和久3 (1.兵庫医科大学ささやま医療センターリハビリテーション室, 2.兵庫医科大学地域総合医療学, 3.兵庫医科大学リハビリテーション医学教室)

キーワード:慢性期脳卒中, 有酸素運動, 呼吸循環代謝応答

【はじめに,目的】慢性期脳卒中患者における歩行能力改善の手段として有酸素運動の有用性が数多く報告されており,特にトレッドミル歩行(トレッドミル)やサイクルエルゴメーター駆動(エルゴメーター)が推奨されている(脳卒中ガイドライン2009)。しかし,トレッドミルとエルゴメーターの運動中の生理学的反応は明らかでなく,これらを知ることは運動療法の選択において重要と考えられる。そこで本研究の目的は,慢性期脳卒中患者におけるトレッドミルとエルゴメーター中の呼吸循環代謝応答について検討することとした。

【方法】当院で入院および外来理学療法を実施している慢性期脳卒中患者11名(年齢52.2±9.7歳,男性9名,女性2名,身長168.2±6.7cm,体重72.7±13.1kg,脳梗塞2名,脳出血7名,くも膜下出血2名,発症後月数41.6±38.0カ月,下肢Brunnstrom stageIII2名,IV7名,V2名)を対象とした。対象者には各運動を定常負荷で10分間行わせ,その際の呼吸循環代謝応答を呼気ガス分析装置にて測定した。測定順序はランダムとし,最初の測定から1週間以内に次の測定を実施した。運動負荷は10分間の連続運動がややきつい(Borg scale13)程度とし,3日以上の前練習を実施した上で決定した。トレッドミルは健側上肢で手すりを把持することを許可し,エルゴメーターは毎分50回転で漕がせた。測定項目は10分間の連続運動における自覚疲労感:Borg scale,呼吸指標として分時換気量:VE(l/分),呼吸数:RR(回/分),循環指標として運動前後の収縮期血圧差:⊿SBP(mmHg),拡張期血圧差:⊿DBP(mmHg),脈拍差:⊿HR(拍/分),代謝指標として平均分時酸素摂取量:VO2(ml/分),分時二酸化炭素排出量:VCO2(ml/分),呼吸商:RQとし,対応のあるt検定を用いて比較した。

【結果】運動負荷はトレッドミル2.4±0.6km/h,エルゴメーター44.5±9.6wattsであった。Borg scaleは有意差を認めなかった(13.5±0.9 vs 13.5±0.8,p=1)。VEはトレッドミルに比べエルゴメーターの方が有意に高値を示した(30.3±5.8 vs 34.7±5.6,p=0.018)。RRは有意差を認めなかった(29.3±5.8 vs 27.6±4.8,p=0.15)。⊿SBPはトレッドミルに比べエルゴメーターの方が有意に高値を示した(9.7±8.9 vs 27.5±11.0,p<0.01)が,⊿DBPは有意差を認めなかった(3.5±6.8 vs 4.9±10.2,p=0.56)。⊿HRはトレッドミルに比べエルゴメーターの方が有意に高値を示した(16.8±11.5 vs 30.6±11.7,p<0.01)。VO2は有意差を認めなかったが(970.5±234.4 vs 995.4±185.2,p=0.65),VCO2はトレッドミルに比べエルゴメーターの方が有意に高値を示した(858.0±187.0 vs 1015.8±175.7,p=0.018)。RQもトレッドミルに比べエルゴメーターの方が有意に高値を示した(0.89±0.05 vs 1.03±0.04,p<0.01)。

【結論】慢性期脳卒中患者における有酸素運動において,エルゴメーターはトレッドミルに比べて強い生理的負荷を与えることが明らかになった。