第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本呼吸理学療法学会 一般演題ポスター
呼吸P03

2016年5月27日(金) 15:20 〜 16:20 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-RS-03-4] 姿勢変化が安静呼吸中におけるchest wallの形状及び運動に及ぼす影響

高嶋幸恵1, 野添匡史1, 高山雄介2, 松下和弘2, 間瀬教史1 (1.甲南女子大学看護リハビリテーション学部理学療法学科, 2.兵庫医科大学ささやま医療センター)

キーワード:胸郭運動, 姿勢, 三次元動作解析

[はじめに・目的]

Chest wall運動の評価は,呼吸理学療法実施に際し頻繁に行われるが,姿勢変化に伴いこの運動がどのような影響を受けるかは明らかにされていない。本研究の目的は,姿勢変化が安静呼吸中におけるchest wallの形状及び運動に及ぼす影響を明らかにすることである。

[方法]

対象は健常成人男性15名(27.5±4.6歳)。測定姿勢は背臥位,側臥位(右側臥位),座位の3姿勢で,それぞれ反射マーカーを66個,81個,86個用いたOptoelectronic Plethysmography法にて安静呼吸中のchest wall形状及び運動を測定した。Chest wall形状は終末呼気位における上部胸郭,下部胸郭,腹部の前後径および横径を,胸骨柄,剣状突起,臍部レベルにて算出した。Chest wall運動は3姿勢すべてにおいて共通して測定可能であった上部胸郭前面,下部胸郭前面,下部胸郭側面,腹部前面,腹部側面の5部位について検討することとし,各部位における全反射マーカーの平均座標変化量を頭尾,前後,左右方向について算出した。統計学的検定としてANOVA及び多重比較法を用いて姿勢の違いがChest wall形状及び運動に与える影響を検討した。有意水準は5%とした。

[結果]

Chest wall形状について,上部胸郭・下部胸郭の前後径は背臥位で有意(p<0.01)に低い値を示し,下部胸郭の横径は側臥位が最も低値を示した(p<0.01)。腹部の前後径は背臥位<側臥位<座位の順に増加し,腹部の横径は側臥位で最も低値を示した(p<0.01)。

Chest wall運動について,上部胸郭前面の頭尾方向及び前後方向への運動は座位で有意(p<0.05vs背臥位,p<0.01vs側臥位)に大きかった。また,下部胸郭前面の頭尾方向(p<0.05vs背臥位,p<0.01vs側臥位)及び前後方向(p<0.01)の運動も上部胸郭と同様に座位で最も大きかった。下部胸郭側面の頭尾方向の運動は座位で最大(p<0.01)で,側方への運動は側臥位が最大(p<0.01vs背臥位,p<0.05vs側臥位)を示した。腹部前面の頭尾および前後方向への運動は各姿勢間で差はなかったが,左右方向への運動は側臥位で最も大きい変化を示した(p<0.05vs背臥位,p<0.01vs座位)。腹部側面の頭尾方向への運動は座位で最も大きく(p<0.05 vs背臥位,p<0.01vs側臥位)側臥位は最も小さい値を示した(p<0.05vs背臥位)。腹部側面の左右方向への運動は,座位と比較して側臥位で大きい値を示したが(p<0.01),前後方向の運動は姿勢間で差は認められなかった。

[結論]

健常男性におけるchest wallは姿勢によって形状・運動が変化し,特に上部胸郭・下部胸郭で違いが生じていることが確認された。