第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本小児理学療法学会 一般演題ポスター
小児P05

2016年5月29日(日) 11:10 〜 12:10 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-SN-05-2] 幼少期に脳出血片麻痺を呈した成人症例の二次障害としての運動機能低下に対する体性感覚への介入

森聡至 (医療法人りゅう整形外科)

キーワード:二次障害, 運動機能, 体性感覚

【はじめに,目的】脳損傷が長期に渡ることにより二次障害が生じ,疼痛や疲労,運動機能の低下といった問題が見られることが知られている。運動機能を保つことは,仕事や自立,健康関連QOL(HRQOL)の面において重要な意味を持つ(Haak, 2009)。また,脳性麻痺患者において体性感覚と運動機能の関係性が示されており(Damiano, 2013),二次障害による運動機能を防いでいくために体性感覚への介入が有効である可能性がある。今回,二次障害として立位・歩行機能の低下が見られた幼少期に脳出血片麻痺を呈した成人症例を経験した。体性感覚に着目して身体認識の向上を目的とした介入を行うことで,静止バランス機能及び歩行に対する自信に良好な変化が見られたため報告する。



【方法】症例は6歳時に脳出血右片麻痺を呈した40代女性。知的機能は比較的良好で,週5日間就労している。現在の身体機能は粗大運動能力分類システム(GMFCS)レベルII相当で,SLB着用で屋外歩行が可能であるが,ここ数年で自身の身体の衰えを感じているとのことであり,段差や雨天時の歩行に不安を感じていた。H27.5より1,2週に1回40分の頻度でPT開始。初期評価では,麻痺側の下肢の表在覚,深部覚はともに重度鈍麻。Selective Control Assessment of the Lower Extremity(SCALE)は左:10/10,右:0/10であり,選択的に麻痺側下肢を動かすことは困難。Short Physical Performance Battery(SPPB)の下位項目のBalance Testsは1/4点であり,足を揃えた立位の10秒維持は可能であるが,セミタンデム立位を維持することは困難であった。Gait Efficacy Scale(GES)は43/100点であった。介入は体性感覚に着目して,①Thが触れた身体部位を答える課題(触覚識別),②麻痺側下肢を動かし,その程度を答える課題(位置覚識別),③麻痺側下肢を決められた場所まで動かしていく課題(運動出力調節),を全て閉眼にて行った。これらの課題は正答率に応じて①から順に段階的に難易度を上げて行っていった。



【結果】介入期間は4ヶ月間。麻痺側の表在覚,深部覚ともに軽度鈍麻,SCALEは左:10/10,右:6/10に改善し,股関節,膝関節の選択的な動きが可能となった。SPPBのBalance Testsは3/4点に向上し,タンデム立位を10秒近く維持できるようになった。GESは77/100点へ向上した。



【結論】今回,二次障害として運動機能が低下した幼少期に脳出血片麻痺を呈した成人症例に対して,触覚及び位置覚の識別課題,運動出力調節課題を行った結果,SPPBのBalance TestsとGESの改善を認めた。体性感覚への介入が二次障害としての運動機能の低下を防ぎ,なおかつ自身の運動機能に対する自己効力感を高めることの一助となったことが示唆される。