第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本スポーツ理学療法学会 一般演題ポスター
スポーツP03

2016年5月27日(金) 16:30 〜 17:30 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-SP-03-1] 体幹筋トレーニングによる跳躍への影響

細谷匠, 渡邊昌宏 (つくば国際大学医療保健学部理学療法学科)

キーワード:跳躍, 体幹, トレーニング

【はじめに,目的】

跳躍力は陸上競技やバレーボール,バスケットボールなど多くの競技種目で必要とされる。近年,スポーツでは体幹筋トレーニングが数多く取り入れられているが,競技で必要とされる跳躍力にどのような影響を及ばしているかは明確になっていない。そこで本研究では,体幹筋トレーニングが跳躍力にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることとした。

【方法】

対象は健常男子大学生21名(年齢19.5±1.1歳,身長169.9±5.4cm,体重65.3±6.5kg)とした。介入方法として体幹筋トレーニング(TMT),跳躍に影響を与えるといわれている下腿三頭筋へのDynamic stretching(DS),腹部圧迫(COMP)の3種類を実施した。TMTとしてFront Bridge,Back Bridge,side Bridgeをそれぞれ1分30秒ずつ保持させた。DSでは最大努力で膝を曲げず真上に連続ジャンプを10回おこなわせた。COMPでは臍部直下から腸骨稜にかけて弾性包帯を使用しできるだけ強く巻いた。それぞれの介入は3日以上の間隔を空けランダムにすべて実施した。跳躍力の評価は垂直跳びとし介入前と介入後それぞれ2回の計測をおこなった。計測には上肢の影響を取り除く為,腰に手を当てた状態でおこない,ジャンプMD(竹井機器工業株式會社)を用いて計測した。介入前と介入後に計測された値はそれぞれ平均値を用いた。統計処理にはSPSS statistics Ver19を用い,各種目における介入前と介入後を対応のあるT検定で比較した。有意水準は5%とした。

【結果】

TMTでは,介入前(47.0±5.5cm)に比べ,介入後(48.4±6.1cm)に有意に高くなった(P=0.003)。COMPでは,介入前(47.3±5.2cm)に比べ介入後(48.0±5.7cm)において高くなる傾向が認められた(P=0.071)。DSでは介入前後で有意差は認められなかった。

【結論】

体幹部の安定性には体幹深部筋の活動が重要であると報告されている。また,体幹を安定させる能力が高い者ほど,下肢の生み出す力を無駄なく上方へ伝達できるといわれている。今回の結果から,体幹筋トレーニングによって深部筋の活動が増加し体幹部の安定性が得られたことで,跳躍力が増したと推察された。また,腹部圧迫によっても腹腔内圧が高まり体幹の安定性が得られることで,跳躍力に影響を及ぼす可能性があることが考えられた。これらのことから単に腹圧を高めるだけではなく,自発的に筋収縮を促し筋活動を高めることが,より体幹の安定性に影響を与えることが示唆された。体幹トレーニングによる上下肢の筋活動の影響も関与している可能性もあることから,今後は体幹筋トレーニングによる上肢・下肢への筋活動と跳躍力に及ぼす影響について明確にしていきたい。