[P-TK-07-3] 回復期リハビリテーション病棟における転倒要因の調査
身体機能・認知機能・精神心理機能の包括的な検討
キーワード:回復期, 転倒予測, アパシー
【はじめに,目的】
回復期リハビリテーション病棟(以下回復期リハ病棟)は急性期病棟に比べ転倒発生頻度が約40%も高いとされる(鈴木,2007)。転倒要因の調査として筋力やバランス能力など身体機能に関する研究は多く,近年では運動イメージと実際の運動との誤差に着目した報告がみられる。また,認知機能との関連についての報告も多く,うつ病など精神心理機能との関連性の報告も増えている。しかし,回復期リハ病棟における調査は少なく,これらの諸機能を包括的に調査した報告は見当たらない。そこで本研究の目的は当院回復期リハ病棟での転倒要因を包括的に調査することとした。
【方法】
平成27年5月から8月に当院入院中の患者で,転倒した者を転倒群とし,同期間の非転倒者をExcel(Microsoft社製)の乱数関数を用いて抽出し対照群とした。転倒の定義はGibson(1990)による「本人の意思からではなく,地面またはそれより低い面に身体の一部が接触した場合」とした。評価は以下のものを用いた。身体機能はFunctional Reach Test(以下FRT)とTimed up and Go Test(以下TUG)。これらは予測値と実測値を測定した。認知機能はMini Mental State Examination(以下MMSE),Frontal Assessment Battery(FAB),Trail Making Test-A(TMT-A)。精神心理機能は抑うつをSelf-rating Depression Scale(以下SDS)とHospital Anxiety and Depression scaleのD値(以下HADS-D),不安をHADSのA値(以下HADS-A),アパシーをやる気スコア。除外基準は重度の認知障害(MMSE10点以下),重度の高次脳機能障害を有する者とした。身体機能において予測値から実測値を引いた値の絶対値を誤差値とし,実測値と誤差値をそれぞれ対応のないt検定を用いて比較した。認知機能,精神心理機能はMann-WhitneyのU検定を用いて比較した。それぞれの評価項目の関係をスピアマンの順位相関係数の検定を用いて検討した。(すべて有意水準は5%未満)
【結果】
すべての検査が可能であった者は転倒群で10例(男性3例,女性7例,平均年齢80.9±7.1)であり,対照群で9例(男性5例,女性4例,平均年齢76.0±6.8)であった。2群間の比較において,TUG誤差値,FRT誤差値,MMSE,HADS-Dの4項目に有意差を認め,やる気スコアは転倒群において点数が高くアパシーの傾向にあった(p=0.054)。転倒群ではやる気スコアとSDS,やる気スコアとHADS-D,HADS-AとSDSに正の相関を,対照群ではやる気スコアとSDS,やる気スコアとHADS-Dに正の相関を認めた。
【結論】
本結果より,転倒要因として既報告と同様に身体機能,認知機能に転倒との関連が示された。さらに,転倒要因として新たにアパシーに関して検討要因となることが示唆された。精神心理機能間に相関を認めたが身体,認知,精神心理機能の間には相関は認められなかった。このことから,これら三つの機能の包括的な評価を行うことで転倒予測の一助になると考える。
回復期リハビリテーション病棟(以下回復期リハ病棟)は急性期病棟に比べ転倒発生頻度が約40%も高いとされる(鈴木,2007)。転倒要因の調査として筋力やバランス能力など身体機能に関する研究は多く,近年では運動イメージと実際の運動との誤差に着目した報告がみられる。また,認知機能との関連についての報告も多く,うつ病など精神心理機能との関連性の報告も増えている。しかし,回復期リハ病棟における調査は少なく,これらの諸機能を包括的に調査した報告は見当たらない。そこで本研究の目的は当院回復期リハ病棟での転倒要因を包括的に調査することとした。
【方法】
平成27年5月から8月に当院入院中の患者で,転倒した者を転倒群とし,同期間の非転倒者をExcel(Microsoft社製)の乱数関数を用いて抽出し対照群とした。転倒の定義はGibson(1990)による「本人の意思からではなく,地面またはそれより低い面に身体の一部が接触した場合」とした。評価は以下のものを用いた。身体機能はFunctional Reach Test(以下FRT)とTimed up and Go Test(以下TUG)。これらは予測値と実測値を測定した。認知機能はMini Mental State Examination(以下MMSE),Frontal Assessment Battery(FAB),Trail Making Test-A(TMT-A)。精神心理機能は抑うつをSelf-rating Depression Scale(以下SDS)とHospital Anxiety and Depression scaleのD値(以下HADS-D),不安をHADSのA値(以下HADS-A),アパシーをやる気スコア。除外基準は重度の認知障害(MMSE10点以下),重度の高次脳機能障害を有する者とした。身体機能において予測値から実測値を引いた値の絶対値を誤差値とし,実測値と誤差値をそれぞれ対応のないt検定を用いて比較した。認知機能,精神心理機能はMann-WhitneyのU検定を用いて比較した。それぞれの評価項目の関係をスピアマンの順位相関係数の検定を用いて検討した。(すべて有意水準は5%未満)
【結果】
すべての検査が可能であった者は転倒群で10例(男性3例,女性7例,平均年齢80.9±7.1)であり,対照群で9例(男性5例,女性4例,平均年齢76.0±6.8)であった。2群間の比較において,TUG誤差値,FRT誤差値,MMSE,HADS-Dの4項目に有意差を認め,やる気スコアは転倒群において点数が高くアパシーの傾向にあった(p=0.054)。転倒群ではやる気スコアとSDS,やる気スコアとHADS-D,HADS-AとSDSに正の相関を,対照群ではやる気スコアとSDS,やる気スコアとHADS-Dに正の相関を認めた。
【結論】
本結果より,転倒要因として既報告と同様に身体機能,認知機能に転倒との関連が示された。さらに,転倒要因として新たにアパシーに関して検討要因となることが示唆された。精神心理機能間に相関を認めたが身体,認知,精神心理機能の間には相関は認められなかった。このことから,これら三つの機能の包括的な評価を行うことで転倒予測の一助になると考える。