第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本地域理学療法学会 一般演題ポスター
地域P07

2016年5月28日(土) 11:40 〜 12:40 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-TK-07-6] 要介護高齢者における二重課題下歩行トレーニングの長期効果検証

北村智哉1, 萩原崇1, 阿波邦彦2, 大杉紘徳2, 堀江淳2 (1.介護老人保健施設アルカデイア, 2.京都橘大学健康科学部)

キーワード:高齢者, 二重課題, 運動機能

【はじめに,目的】

高齢者のQOLの維持・増進,健康寿命の延伸を目的とした効果的な介護予防プログラムの開発が必要視されている中,転倒予防を目的とした二重課題条件下による歩行トレーニング(Dual-task Training:DT)が臨床で用いられることが多く,その効果検証も行われている。しかし,要介護者を対象としたDTの長期的な効果検証はあまりなされていない。そこで本研究では,12ヶ月間の縦断的な検証により,要介護高齢者に対するDTの効果を認知機能,身体機能,ADLから明らかにすることを目的とした。


【方法】

対象者は,平成25年2月から平成27年10月の間に通所リハビリテーションを利用し,12ヶ月間の縦断調査が可能であった要介護高齢者23名(男性9名,平均年齢79.3±6.9歳,要支援1;1名,要支援2;5名,要介護1;11名,要介護2;5名,要介護3;1名)であった。なお,研究同意が得られない者は対象から除外した。測定指標は,Mini Mental State Examination(MMSE),Trail Making Test-A(TMT-A),長座位体前屈,上体起こし回数,握力,6分間歩行距離(6MWD),障害物歩行時間,大腿四頭筋力体重比(%QF),Time up go test(TUG),Functional Reach test(FR),最速歩行時間,片脚立位時間,Functional Independence Measure(FIM),老研式活動能力指標を介入前後で評価した。

対象を「通常の理学療法」のみを実施した群を対照群(n=11),「通常の理学療法」に加え,DTを追加した群を介入群(n=12)の2群に分類し,12ヶ月間継続した。「通常の理学療法」は,生活機能の向上を目的とした関節可動域運動,筋力増強運動,ADL練習などを実施した。DTは暗算課題を行いながらの歩行運動とした。暗算課題は3桁の数から1,2,3のいずれかを引き続ける課題とし,対象者が歩行を止めずに回答できる負荷を与えた。統計学的解析は,群×介入前後の分割プロットデザイン分散分析を行い,その後の検定にはBonferroni法を用いた。有意水準は5%とした。


【結果】

老健式活動能力指標(p<0.05)において交互作用を認め,介入後の介入群で対照群よりも有意な高値を示した。その他の測定指標には有意な交互作用は認めなかった。


【結論】

本研究結果より,DTは社会適応能力の改善に有用である可能性が示唆された。一方で先行研究において示さている注意機能や認知機能の改善といったDTの介入効果は,本研究では明らかにならなかった。二重課題は与えられる負荷量により,脳活動の賦活が異なることが報告されていることから,本研究対象者に与えた課題が適切でなかった可能性が示唆される。