第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本地域理学療法学会 一般演題ポスター
地域P10

2016年5月28日(土) 16:00 〜 17:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-TK-10-3] 介護老人保健施設入所者のOsteosarcopenia有病率についての調査研究

今岡真和1,2, 樋口由美1, 藤堂恵美子1, 上田哲也1, 北川智美1, 安藤卓1, 高尾耕平1, 安岡実佳子1, 黒﨑恭兵2, 池内まり2, 七川大樹2 (1.大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科, 2.介護老人保健施設だいせんリハビリテーション科)

キーワード:骨粗鬆症, サルコペニア, 要介護高齢者

【はじめに,目的】

近年,Osteosarcopenia(以下:OS)有病によるリスクがいくつか報告された。OSはサルコペニア(Sarcopenia以下:SP)と骨粗鬆症(Osteoporosis以下:OP)のどちらも有病している状態であり,SP単独もしくはOP単独を有病している者と比較して転倒や大腿骨骨折リスクが増大する。そのため,OSの現状を把握する必要性は非常に高い。しかしながら,これまで介護老人保健施設(以下:老健施設)入所者のOS有病率は高いと予測はされているが,実態は明らかにされていない。そのため,本研究はOSの有病率を調査し,老健施設における今後のOS介入研究の資料となるための基盤的なデータを収集することとした。


【対象および方法】

対象は老健施設に入所する65歳以上の要介護高齢者89名(女性68名),平均年齢85.0±7.8歳とした。測定項目は,Skeletal Muscle Mass Index(以下:SMI)値,握力,%Young Adult Mean(以下:%YAM),血液中ビタミンD濃度25(OH)D,要介護度,過去1年間の転倒歴,長谷川式簡易知能評価スケール(以下:HDS-R),FIM,年齢,身長,体重,BMIとした。SPの定義はAsia Working Group for Sarcopeniaのアルゴリズムに従った。OPは%YAMが70以下の者とした。統計学的検討はOS,SP,OPの有病率を集計した後に,性別ごとのOS有病率,10歳ごとの年齢階級別のOS有病率を調査した。さらに,OS有病者とSP単独もしくはOP単独で有病している者とそれぞれの転倒歴や骨折歴を比較した。そのため,項目に応じてχ2検定,Fisher's exact test,一元配置分散分析を用いて行った。なお,有意水準は5%未満とした。


【結果】

対象者89名のうちアルゴリズムにて判定されたSPは75名(84.3%),%YAM70以下のOPは70名(78.7%)であり,これら2つを同時に有するOSは61名(68.5%)であった。そのため,SP単独で有病する者は14名(18.7%),OP単独で有病する者は9名(12.9%)であった。非該当者は5名(5.6%)であった。次に,性別に分けたOS有病率では,男性8名(38.1%),女性53名(77.9%)であった。65歳から10歳毎の年齢階級別のOS有病率は65歳~74歳群で7名(58.3%),75歳~84歳群で14名(63.6%),85歳~94歳群で31名(68.9%),95歳以上群で9名(90.0%)であった。OS,SP,OP,非該当の4群に分けた転倒と骨折の既往歴では,過去一年間の転倒歴はOS22名(36.1%),SP9名(64.3%),OP4名(44.4%),非該当2名(40.0%)であり,骨折歴はOS16名(26.2%),SP1名(7.1%),OP2名(22.2%),非該当1名(20.0%)であり,OS有病と転倒・骨折歴に有意な関連はなかった。


【考察と結論】

老健施設入所者を対象にOS有病率について調査した。全体で68.5%の有病率であり,先行研究で示されている平均80歳台の有病率37%と比較して高いことが示唆された。また,女性の有病率は男性のそれと比べ有意に高く,加齢に併せ有病率も増加傾向を示した。OSと転倒・骨折歴の関連は見られず,老健施設入所者のOS有病が転倒や骨折のリスクではなかった。