[P-YB-06-2] 脳卒中患者の介護負担感に関連する要因の検討:システマティックレビュー
キーワード:在宅支援, 要介護, 抑うつ
【はじめに,目的】
脳卒中者の介護者において,介護負担感の増大からうつ症状などの精神症状を発症することがある(Persson, et al., Stroke, 2015)。臨床では,介護負担感の軽減を目的とした環境設定やメンタルケアが行われているものの,経験的な側面に頼ることも多い。個々の先行研究では,介護負担感に関連する様々な要因が報告されているが,一定の見解が得られていない現状がある。本研究では,過去の観察研究から脳卒中者の介護者における介護負担感に関連する要因およびその特徴について,システマティックレビューにより検証することとした。
【方法】
本研究は,システマティックレビューのガイドラインであるPRISMA声明(PRISMA statement, 2009)に準じて実施した。「介護負担」および「脳卒中」の類義語を抽出し,それらの組み合わせについて検索式を立て,MEDLINEおよび医学中央雑誌の電子データベースを用いて文献検索を行った(検索日:2015年10月20日)。文献の包含基準は,1)英語あるいは日本語で記載されているもの,2)全文が入手可能なもの,3)原著論文とした。除外基準は,1)介護負担感に関連する要因が検討されていないもの,2)対象が脳卒中者の家族介護者でないものとした。
採択基準を満たした文献について,介護負担感に関連する介護者の特徴および脳卒中者の身体能力などを抽出し,共通点や相違点を分析した。なお,以上のレビューは,妥当性を担保するために2名のreviewerで調査を行い,合致しない点については話し合いにより結果をまとめた。
【結果】
検索の結果,59件の文献が抽出され,採択基準をすべて満たしたものは7件であった。7件中3件で,介護者の抑うつや不安といった精神状態と介護負担感の関連性が調査されており,いずれも介護負担感と有意な正の関連性が認められた。介護負担感の強い介護者の特徴は,ストレスへの対処能力が低く,介護者が配偶者の場合では,子供の場合と比べて介護負担感が強かった。また,介護支援サービスの利用や家族の協力といったソーシャルサポートを受けていない場合,介護負担感が強かった。脳卒中者の身体能力については,7件中6件で,日常生活動作能力(以下,ADL能力)と介護負担感の関連性が調査されており,そのうち4件で,有意な負の関連性が報告されていた。
退院後の期間に着目した研究では,退院後3か月で脳卒中者と介護者の抑うつや不安といった精神状態,退院後12か月で介護指導の有無,介護者の抑うつ,ソーシャルサポートが,介護負担感に関連する要因として抽出された。
【結論】
介護負担感が強い介護者の特徴として,ストレスの対処能力が低いこと,配偶者が介護者であることが挙げられた。また,介護者の精神状態が悪化していると,介護負担感が強い傾向が見られた。ADL能力と介護負担感の関連性については,一定した見解は得られなかった。なお,本研究の限界として,観察研究の文献レビューであり,介護負担感と各要因の因果関係は言及できないことが挙げられる。
脳卒中者の介護者において,介護負担感の増大からうつ症状などの精神症状を発症することがある(Persson, et al., Stroke, 2015)。臨床では,介護負担感の軽減を目的とした環境設定やメンタルケアが行われているものの,経験的な側面に頼ることも多い。個々の先行研究では,介護負担感に関連する様々な要因が報告されているが,一定の見解が得られていない現状がある。本研究では,過去の観察研究から脳卒中者の介護者における介護負担感に関連する要因およびその特徴について,システマティックレビューにより検証することとした。
【方法】
本研究は,システマティックレビューのガイドラインであるPRISMA声明(PRISMA statement, 2009)に準じて実施した。「介護負担」および「脳卒中」の類義語を抽出し,それらの組み合わせについて検索式を立て,MEDLINEおよび医学中央雑誌の電子データベースを用いて文献検索を行った(検索日:2015年10月20日)。文献の包含基準は,1)英語あるいは日本語で記載されているもの,2)全文が入手可能なもの,3)原著論文とした。除外基準は,1)介護負担感に関連する要因が検討されていないもの,2)対象が脳卒中者の家族介護者でないものとした。
採択基準を満たした文献について,介護負担感に関連する介護者の特徴および脳卒中者の身体能力などを抽出し,共通点や相違点を分析した。なお,以上のレビューは,妥当性を担保するために2名のreviewerで調査を行い,合致しない点については話し合いにより結果をまとめた。
【結果】
検索の結果,59件の文献が抽出され,採択基準をすべて満たしたものは7件であった。7件中3件で,介護者の抑うつや不安といった精神状態と介護負担感の関連性が調査されており,いずれも介護負担感と有意な正の関連性が認められた。介護負担感の強い介護者の特徴は,ストレスへの対処能力が低く,介護者が配偶者の場合では,子供の場合と比べて介護負担感が強かった。また,介護支援サービスの利用や家族の協力といったソーシャルサポートを受けていない場合,介護負担感が強かった。脳卒中者の身体能力については,7件中6件で,日常生活動作能力(以下,ADL能力)と介護負担感の関連性が調査されており,そのうち4件で,有意な負の関連性が報告されていた。
退院後の期間に着目した研究では,退院後3か月で脳卒中者と介護者の抑うつや不安といった精神状態,退院後12か月で介護指導の有無,介護者の抑うつ,ソーシャルサポートが,介護負担感に関連する要因として抽出された。
【結論】
介護負担感が強い介護者の特徴として,ストレスの対処能力が低いこと,配偶者が介護者であることが挙げられた。また,介護者の精神状態が悪化していると,介護負担感が強い傾向が見られた。ADL能力と介護負担感の関連性については,一定した見解は得られなかった。なお,本研究の限界として,観察研究の文献レビューであり,介護負担感と各要因の因果関係は言及できないことが挙げられる。