第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P12

2016年5月28日(土) 14:50 〜 15:50 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-YB-12-2] 朝のラジオ体操会に参加する高齢者の5年間の脊柱後彎角度の変化と身体機能及び精神的健康度の関連

植田拓也1, 柴喜崇2, 前田悠紀人3, 渡辺修一郎4 (1.山王リハビリ・クリニック, 2.北里大学医療衛生学部, 3.港北整形外科, 4.桜美林大学大学院老年学研究科)

キーワード:高齢者, 身体機能, 運動習慣

【はじめに,目的】

脊柱後彎変形は加齢に伴う姿勢変化であり,身体機能(Antonelli, 2004)やQuality of lifeの低下(Miyakoshi, 2003)に関係がある。しかし,脊柱後彎変形の経年での変化についての報告は少なく,それに伴う身体機能及び精神的健康度との関連も明らかとなっていない。そこで本研究では,運動習慣のある地域在住高齢者を対象として,5年間の身体機能及び精神的健康度の変化と,脊柱後彎角度の変化と身体機能および精神的健康度の関連を明らかにすることを目的とした。


【方法】

対象は神奈川県S市のラジオ体操会会員から募集し,2010年及び2015年の追跡調査に参加した地域在住高齢者41名(男性21名,女性20名,平均年齢76.5±5.5歳)とした。参加者には体力測定と質問紙調査を実施した。調査項目は,年齢,性別,脊柱後彎角度,握力,開眼片脚立位時間,立位体前屈,Timed Up and Go Test,5m最大および通常歩行時間,膝伸展筋力,Weight Bearing Index(WBI),WHO-5精神的健康度評価表(WHO-5),Fall Efficacy Scale International(FESI)を調査した。解析は,2010年及び2015年の調査結果を性別毎でWilcoxon符号付順位和検定により比較した。また,脊柱後彎角度の5年間の変化量と追跡調査時の各調査項目について,Spearmanの順位相関係数を用い分析した。


【結果】

男性では脊柱後彎角度(2010年平均±標準偏差;162.4±5.2度/2015年平均±標準偏差;160.6±4.4度,p=.049),開眼片脚立位時間(42.32±23.1秒/33.43±26.5秒,p=.004),握力(38.0±6.9kg/33.0±7.9kg,p<.01),立位体前屈(4.5±7.1cm/0.9±7.2cm,p<.01),FESI得点(26.0±9.9点/31.0±12.15点,p=.01),女性では脊柱後彎角度(165.6±7.8(度)/160.1±5.1(度),p<.01),握力(25.3±2.5kg/23.6±2.3kg,p<.01),立位体前屈(13.0±6.7cm/11.2±7.3cm,p=.021),WHO5得点(20.4±3.2点/18.8±4.1点,p=.025),WBI(61.1±16.3%/52.6±12.8%,p<.01)となり2010年調査に比較し2015年調査で有意な低下が確認された。しかし,5m最速歩行時間(2.41±0.4秒/2.21±0.5秒,p=.04)は有意に向上した。また,脊柱後彎角度の変化量との相関では,2015年調査時の握力(r=-.359,p=.021,n=41),膝伸展筋力(r=-.383,p=.015,n=40)の2項目で有意な低い相関関係が確認された。


【結論】

運動習慣のある地域在住高齢者においても5年の経年による身体機能の低下及び転倒恐怖感の増大が明らかとなった。しかし,5m最速歩行時間に向上がみられることから,一般的な加齢による身体機能変化とは異なる傾向が示された。また,一般高齢者を対象とした先行研究(Furuna, 1998)と比して,身体機能の低下率は同様であるが,ベースライン時の数値が高値を示していることから,運動習慣を有することで加齢に伴う身体機能低下の影響を最小限に抑制されることが示唆された。また,脊柱後彎角度の変化量と握力,膝伸展筋力に有意な相関が確認されたことから,脊柱後彎の進行と全身の筋力低下に何らかの関係があることが示唆された。