第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P12

2016年5月28日(土) 14:50 〜 15:50 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-YB-12-5] 地域在住高齢者を対象とした運動継続のためのコミュニティの育成の試み

榎本雪絵1, 岡島康友2, 澁谷恭子3, 寺本由美子4, 稲垣円5, 森薫5, 金子郁容5 (1.杏林大学保健学部理学療法学科, 2.杏林大学医学部, 3.(株)フィリア, 4.からだづくり三鷹フィットネスクラブ, 5.慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科)

キーワード:地域在住高齢者, 健康増進, コミュニティの育成

【はじめに,目的】現在,地域包括ケアシステムが推進されており,その地域の特徴をふまえた健康寿命の延伸などを担うコミュニティの育成が重要な課題と思われる。町内会,自治会等の地縁に依存したコミュニティづくりが困難と思われる都市部などでは,健康増進や介護予防など,その目的に特化したコミュニティを新たに育成する視点が必要となると思われる。本研究は,地域在住高齢者の健康増進のため,民間のスポーツクラブにて一定期間「いきいき健康運動サロン」を実施し,専門職による運動プログラムを提供することで,その民間のスポーツクラブの活用含めた運動習慣の獲得および増進,参加者間の社会的交流の促進,運動継続のためのコミュニティを育成することを目的とした。

【方法】対象は,地域在住高齢者21名(男性15名および女性6名,平均年齢72.7±6.2歳,58~81歳)。運動プログラムはトレーニング前後の柔軟体操運動とスポーツクラブに設置しているマシンを用いた軽負荷の筋力トレーニング,有酸素運動とし,1回につき約90分,週2回の頻度で9週間,計18回実施した。運動意欲と運動継続を促進するため,実施前後に体力測定を実施した。体力測定項目は,開眼片足立ち(秒),ファンクショナルリーチ(以下FR),Timed-up&go-test(以下TUG),握力とした。開眼片足立ち,FR,TUGの測定においては,デジタルミラー(パナソニック製)を用いた。また,継続的に運動する参加者に対して参加毎に“へルスケアポイント”を提供し,一定以上集まると会場の一階にある喫茶店で利用できる無料飲み物券や無料ランチ券を配布した。

【結果】体力測定結果に示される参加者の身体機能は,実施前から同年代の結果と比較して高い水準を示していた。開眼片足立ちの実施前平均値は51.2秒で実施後は53.2秒,FRの実施前平均値は36.1cmで実施後は40.0cm,TUGの実施前平均値は4.9秒で実施後は4.8秒,握力の実施前平均値は29.8Kgで実施後は30.2Kgと,すべての項目で改善傾向を示した。また,経過に伴い参加者同士が誘い合い,無料飲み物券を活用して歓談する場面が多くみられるようになった。実施後に,参加者全員で「体笑会」という会を立ち上げ,定期的に集うようになり,参加者7名が,実施終了後に会場になった民間スポーツクラブに入会し(有料),実施後8ヶ月経過後も運動継続している。

【結論】一定期間,専門職の指導のもと運動プログラムの提供を行うことにより,適切な運動方法と運動習慣の獲得が図れたと思われた。また,同じ運動プログラムに参加していること,運動場面以外にも交流する機会を持つことが,実施後の自主グループの立ち上げ,コミュニティの育成の一助となったと思われた。