第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P15

2016年5月29日(日) 10:00 〜 11:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-YB-15-2] 急性期病院入院中に転倒した患者における診療科別にみた栄養状態の特性

秋達也, 音地亮 (社会医療法人財団福岡新水巻病院リハビリテーション科)

キーワード:転倒, 栄養, GNRI

【はじめに,目的】

転倒予防ガイドラインでは転倒リスクの要因として,筋力弱化,バランス低下など11種類を示している。Manianは転倒には感染症の可能性を示唆し,呼吸器感染は特に多い原因であると報告した。また,田中は日本人高齢者を対象とした調査で,サルコペニアは1.81倍易転倒傾向にあると報告した。転倒発生率が高いと予想される脳卒中とパーキンソン病患者を対象とした疫学研究で,Tuturimaは退院後半年間で75%に増加すると報告した。本研究は,急性期病院における転倒患者の特性を,診療科別に分類し栄養評価やその他関連因子を後方視的に観察することを目的とした。


【方法】

2014年4月から2015年3月までの期間で,当院入院中に転倒した患者109名(平均年齢78.5±11歳,男性52例,女性69例)を対象とした。方法はカルテから後方視的に診療科(整形外科,呼吸器内科,脳神経外科,循環器科,消化器内科,その他),性別,年齢,体重,身長,血清アルブミン値(以下Alb),体格指数(以下BMI),Geriatric Nutritional Risk Index(以下GNRI),FIM,転帰を調査した。また,GNRI得点のリスク判定は,原法に基づき82点以下を重度栄養障害,82点から91点を中等度,92点から98点を軽度,98点以上をリスクなしと群分けした。なお統計解析は,診療科6群とその他の項目にて1元配置分散分析を用いて比較し,有意水準を5%とした。


【結果】

対象者の内訳として,整形外科19名(17%),呼吸器内科23名(21%),脳神経外科29名(26%),循環器科25名(23%),消化器内科5名(5%),その他8名(7%)。全対象者でのGNRI得点は91±12点。リスク判定の内訳として重度栄養障害20名(18%),中等度35名(32%),軽度26名(23%),リスクなし28名(26%)。Albは3.5±0.8g/dl,BMIは21.7±4.5kg/m2。転帰は自宅43名(39%),転院50名(46%),施設9名(8%),死亡7名(6%)。FIMの運動項目は30.2±20点,FIMの認知項目は19.5±10点であった。診療科別に見た特性にて,Albで脳神経外科(3.9±0.6)と呼吸器内科(3.2±0.4)に有意差を認めた(p<0.05)。また,体重でも同様の結果を認めた(p<0.01)。呼吸器内科は,整形外科と脳神経外科と比較し有意に年齢が高かった(p<0.01)。


【結論】

転倒患者全体平均の特徴として,AlbとGNRIは低栄養傾向にあった。またGNRIのリスク判別で転倒患者の約75%は低栄養リスクがあった。しかし,BMIは標準値であり,疾患に関わらず転倒患者は潜在的に低栄養状態の患者が多い傾向が示唆された。呼吸器内科は脳神経外科と比較し高齢であり,Albと体重は有意に低値であった。これは,高齢者は呼吸器能や免疫力の低下により呼吸器疾患に罹患し易く,疾患の特性である呼吸数増加が消費エネルギー量の増加を惹起し低値になったと考えられる。今回,非転倒群との比較ではない為,転倒のリスク要因として栄養状態を示すことが出来なかった点や,転倒の原因を解析に加味していない点が本研究の限界である。