[O-ED-04-2] 理学療法士を目指す学生のキャリアに対する意識
キャリアに対する満足度とキャリアアンカーの調査
Keywords:キャリア, キャリア教育, キャリアアンカー
【はじめに,目的】
キャリアとは,文部科学省によると「個々人が生涯にわたって遂行する様々な立場や役割の連鎖及びその過程における自己と働くことの関係付けや価値付けの累積」と定義されている。また,キャリア教育とは,中央教育審議会答申に「一人一人の社会的・職業的自立に向け,必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して,キャリア発達を促す教育」と示されており,理学療法士養成校である学校においても,キャリア教育の実施が求められている。この卒前におけるキャリア教育の実施において,学生のキャリアに対する意識を把握することは有益であるといえる。そこで本研究は,理学療法士を目指す学生のキャリアに対する意識を調査することを目的とした。
【方法】
対象は,A専門学校の理学療法学科学生(1~3年生)の121名とし,アンケート調査を実施した。調査項目は,学年,自身のキャリアに対する満足度,Scheinが開発したキャリアアンカーの質問票とした。キャリアに対する満足度は,「全く満足していない」から「とても満足している」の4段階とした。Scheinは,キャリアアンカーをキャリア選択に関連する能力・動機・価値観と定義し,8種類のアンカーカテゴリー(専門職能別能力,経営管理能力,自律独立,保障安定,起業家的創造性,奉仕社会貢献,純粋挑戦,生活様式)を提唱している。質問票は,各アンカー5項目ずつの計40項目からなり,各項目を「まったくあてはまらない」「たまにあてはまる」「たいていあてはまる」「いつもあてはまる」の1から4点で評価,さらに各質問項目のうち,自分が感じていることを最もよく言い表している項目を5つあげ,その項目に5点ずつ加算し,合計点数が高い項目ほど,8つのキャリアアンカーのうち価値を置いているものとされる。比較検討および統計は,全学生におけるキャリア満足度・キャリアアンカーの割合,各調査項目間の相関に関して,それぞれχ2適合度検定,Spearmanの順位相関係数を実施した。有意水準はp<0.05とし,統計処理はR2.8.1にて算出した。
【結果】
アンケート回収率は97.5%であった。全学生におけるキャリア満足度は,肯定回答が72.0%,否定回答が28.0%,キャリアアンカーは,生活様式30.0%,保障安定17.3%,純粋挑戦16.4%,専門職能能力14.5%,奉仕社会貢献12.7%,自立独立7.3%,経営管理能力1.8%であり,有意な偏りがあった。各調査項目間に有意な相関は認められなかった
【結論】
学生の7割程度が自身のキャリアに対して満足していること,キャリアアンカーは,自分個人のニーズ,家族のニーズ,キャリアからの要請にバランスをとり,それらを統合できることに価値をおく,生活様式が最も多く,次いで保障安定,純粋挑戦,専門職能能力,奉仕社会貢献の順で多いことが確認された。本研究結果から,卒前における効果的なキャリア教育の実施について検討していくことが必要であると考えられる。
キャリアとは,文部科学省によると「個々人が生涯にわたって遂行する様々な立場や役割の連鎖及びその過程における自己と働くことの関係付けや価値付けの累積」と定義されている。また,キャリア教育とは,中央教育審議会答申に「一人一人の社会的・職業的自立に向け,必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して,キャリア発達を促す教育」と示されており,理学療法士養成校である学校においても,キャリア教育の実施が求められている。この卒前におけるキャリア教育の実施において,学生のキャリアに対する意識を把握することは有益であるといえる。そこで本研究は,理学療法士を目指す学生のキャリアに対する意識を調査することを目的とした。
【方法】
対象は,A専門学校の理学療法学科学生(1~3年生)の121名とし,アンケート調査を実施した。調査項目は,学年,自身のキャリアに対する満足度,Scheinが開発したキャリアアンカーの質問票とした。キャリアに対する満足度は,「全く満足していない」から「とても満足している」の4段階とした。Scheinは,キャリアアンカーをキャリア選択に関連する能力・動機・価値観と定義し,8種類のアンカーカテゴリー(専門職能別能力,経営管理能力,自律独立,保障安定,起業家的創造性,奉仕社会貢献,純粋挑戦,生活様式)を提唱している。質問票は,各アンカー5項目ずつの計40項目からなり,各項目を「まったくあてはまらない」「たまにあてはまる」「たいていあてはまる」「いつもあてはまる」の1から4点で評価,さらに各質問項目のうち,自分が感じていることを最もよく言い表している項目を5つあげ,その項目に5点ずつ加算し,合計点数が高い項目ほど,8つのキャリアアンカーのうち価値を置いているものとされる。比較検討および統計は,全学生におけるキャリア満足度・キャリアアンカーの割合,各調査項目間の相関に関して,それぞれχ2適合度検定,Spearmanの順位相関係数を実施した。有意水準はp<0.05とし,統計処理はR2.8.1にて算出した。
【結果】
アンケート回収率は97.5%であった。全学生におけるキャリア満足度は,肯定回答が72.0%,否定回答が28.0%,キャリアアンカーは,生活様式30.0%,保障安定17.3%,純粋挑戦16.4%,専門職能能力14.5%,奉仕社会貢献12.7%,自立独立7.3%,経営管理能力1.8%であり,有意な偏りがあった。各調査項目間に有意な相関は認められなかった
【結論】
学生の7割程度が自身のキャリアに対して満足していること,キャリアアンカーは,自分個人のニーズ,家族のニーズ,キャリアからの要請にバランスをとり,それらを統合できることに価値をおく,生活様式が最も多く,次いで保障安定,純粋挑戦,専門職能能力,奉仕社会貢献の順で多いことが確認された。本研究結果から,卒前における効果的なキャリア教育の実施について検討していくことが必要であると考えられる。