[O-MT-04-5] 非特異的腰痛症患者における腰部多裂筋機能
―筋断面積および表層線維・深層線維走行角度からの検証―
キーワード:非特異的腰痛症, 腰部多裂筋, 筋走行角度
【はじめに,目的】
多裂筋は脊椎分節的安定性機能を有するとされ,MRIや表面筋電図を用いた報告も多く散見される。近年では超音波画像診断の進歩により侵襲も少なくリアルタイムで障害把握が可能なこともあり,臨床場面でも多用され,報告も多岐にわたる。また,表層部,深層部で筋滑走方向に相違があることは確認されており,腰部多裂筋においても表層部・深層部で筋萎縮等の筋線維変性が筋活動時の滑走動態に変化を及ぼすことが予想される。
そこで今回,超音波診断装置を用い,筋断面積の比較,および腰部多裂筋表層・深層部での収縮動態を走行角度の変化から検証を行った。
【方法】
対象は健常者16名(平均年齢23.5歳,平均身長172.6cm,平均体重62.9kg),非特異的腰痛症患者16名(平均年齢24.2歳,平均身長170.9cm,平均体重65.2kg)とした。多裂筋導出にはALOKA社製超音波画像診断装置を用いBモード,10MHzで行った。測定肢位は安静腹臥位,四つ這い位とした。課題運動は四つ這い位での生理的弯曲を維持した状態からの対側上肢拳上等尺性運動で,安静時および非疼痛側と比較した。測定部位はL5棘突起2.5cm外側とし,画像処理には同機器画像処理ソフトを用いた。比較項目は筋断面積,筋収縮時の筋走行角度とした。筋走行角度測定は超音波診断装置画面上に水平線を引き,安静時および収縮時の水平線と筋線維走行とのなす角度を用いた。測定部位は断面積測定と同一部位とした。筋断面積,走行角度測定においては,1つの画像につき3回ずつ測定を行い,検者内信頼性として,級内相関係数を求めた。統計処理にはSPSSを使用し,3肢位による筋断面積の比較には,一元配置分散分析および多重比較を,安静時および筋収縮時の筋走行角度の比較,健側と疼痛側の比較には対応のあるt検定を,2群間の比較には対応のないt検定用いた。有意水準はいずれも5%未満とした。
【結果】
対象者属性に有意差は認めなかった。健常群に比較し非特異的腰痛群で,四つ這い,四つ這い上肢挙上で筋断面積が有意に少なかった(p<0.05)。非特異的腰痛群では肢位別による断面積に差は認めなかった。筋走行角度において,健側深層線維で安静時と収縮時に有意差を認め(p<0.05),疼痛側で差は認めなかった。また深層線維収縮時に健側と患側で有意差を認めた(p<0.01)。
【結論】筋断面積の比較では,非特異的腰痛群においても,健側は健常人同様の推移を示し,健側断面積は変化せず,患側においてのみ選択的な萎縮を認める結果となり,先行研究を支持するものとなった。筋線維走行角度からの検証では,非特異的腰痛群における深層線維での角度変化が有意に少ない結果となり,多裂筋機能障害,その背景に,深層線維の角度(滑走障害)変化が影響している可能性を示唆するものであった。
多裂筋は脊椎分節的安定性機能を有するとされ,MRIや表面筋電図を用いた報告も多く散見される。近年では超音波画像診断の進歩により侵襲も少なくリアルタイムで障害把握が可能なこともあり,臨床場面でも多用され,報告も多岐にわたる。また,表層部,深層部で筋滑走方向に相違があることは確認されており,腰部多裂筋においても表層部・深層部で筋萎縮等の筋線維変性が筋活動時の滑走動態に変化を及ぼすことが予想される。
そこで今回,超音波診断装置を用い,筋断面積の比較,および腰部多裂筋表層・深層部での収縮動態を走行角度の変化から検証を行った。
【方法】
対象は健常者16名(平均年齢23.5歳,平均身長172.6cm,平均体重62.9kg),非特異的腰痛症患者16名(平均年齢24.2歳,平均身長170.9cm,平均体重65.2kg)とした。多裂筋導出にはALOKA社製超音波画像診断装置を用いBモード,10MHzで行った。測定肢位は安静腹臥位,四つ這い位とした。課題運動は四つ這い位での生理的弯曲を維持した状態からの対側上肢拳上等尺性運動で,安静時および非疼痛側と比較した。測定部位はL5棘突起2.5cm外側とし,画像処理には同機器画像処理ソフトを用いた。比較項目は筋断面積,筋収縮時の筋走行角度とした。筋走行角度測定は超音波診断装置画面上に水平線を引き,安静時および収縮時の水平線と筋線維走行とのなす角度を用いた。測定部位は断面積測定と同一部位とした。筋断面積,走行角度測定においては,1つの画像につき3回ずつ測定を行い,検者内信頼性として,級内相関係数を求めた。統計処理にはSPSSを使用し,3肢位による筋断面積の比較には,一元配置分散分析および多重比較を,安静時および筋収縮時の筋走行角度の比較,健側と疼痛側の比較には対応のあるt検定を,2群間の比較には対応のないt検定用いた。有意水準はいずれも5%未満とした。
【結果】
対象者属性に有意差は認めなかった。健常群に比較し非特異的腰痛群で,四つ這い,四つ這い上肢挙上で筋断面積が有意に少なかった(p<0.05)。非特異的腰痛群では肢位別による断面積に差は認めなかった。筋走行角度において,健側深層線維で安静時と収縮時に有意差を認め(p<0.05),疼痛側で差は認めなかった。また深層線維収縮時に健側と患側で有意差を認めた(p<0.01)。
【結論】筋断面積の比較では,非特異的腰痛群においても,健側は健常人同様の推移を示し,健側断面積は変化せず,患側においてのみ選択的な萎縮を認める結果となり,先行研究を支持するものとなった。筋線維走行角度からの検証では,非特異的腰痛群における深層線維での角度変化が有意に少ない結果となり,多裂筋機能障害,その背景に,深層線維の角度(滑走障害)変化が影響している可能性を示唆するものであった。