The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

Presentation information

日本神経理学療法学会 » 口述発表

[O-NV-01] 口述演題(神経)01

Fri. May 12, 2017 11:00 AM - 12:00 PM B3会場 (東京ベイ幕張ホール No. 6)

座長:保苅 吉秀(順天堂大学医学部附属順天堂医院リハビリテーション室)

日本神経理学療法学会

[O-NV-01-1] 脳卒中急性期に長下肢装具を必要とする症例における3週間後の短下肢装具への移行状況の調査と短下肢装具への移行を予測する因子の検討

辻本 直秀, 大鹿糠 徹, 阿部 浩明, 関 崇志 (一般財団法人広南会広南病院リハビリテーション科)

Keywords:急性期脳卒中, 片麻痺者, 長下肢装具作製

【はじめに】

脳卒中発症後早期から下肢装具を使用し歩行練習を実践することが推奨される。重度片麻痺者で長下肢装具(以下,KAFO)を必要とする場合には,状態及び体格に合わせ早期にKAFOを作製することが望ましいと考えられる。一方で,KAFOの作製期間が約2週間のため,完成後短期間で短下肢装具(以下,AFO)へ移行する症例では作製の保留も考慮すべきであろう。ところが,KAFOからAFOに移行する時期を予測する指標は確立されず,臨床的な経験に依存せざるを得ない状況である。

本研究の目的は,発症10日目にKAFOを必要とした脳卒中片麻痺者を対象とし,その3週間後の装具使用状況を調査し,AFOへ移行可能な症例とKAFOを継続使用している症例の特性を明らかにし,AFOへの移行を予測し得る因子を抽出することである。


【方法】

2015年8月から2016年9月までの間に当院に入院し,発症10日の時点で歩行練習中にKAFOを必要とし,その3週間後まで装具使用状況の調査が可能であった31名を対象とした。調査項目は年齢,性別,BMI,入院前FAC,病型,損傷側,脳卒中既往の有無,JCS,GCS,BRS,自動ROM(非麻痺側・麻痺側股関節屈曲,膝関節伸展,足関節背屈),他動ROM(非麻痺側・麻痺側股関節伸展,膝関節伸展,足関節背屈),麻痺側下肢荷重量,麻痺側片脚立位時の膝関節角度,腱反射(膝関節伸展筋,足関節底屈筋),MAS(膝関節屈曲筋,足関節底屈筋),SIAS(下肢感覚,視空間認知,言語),SCP,TCT,歩行練習量,脳画像上での錐体路損傷の有無,そして3週間後(30.9±1.5病日)の装具使用状況を調査した。なお,調査時期は10.1±1.2病日であった。

統計処理は,対象者を装具使用状況よりAFOへ移行可能な症例(以下,AFO移行群)とKAFOを継続使用している症例(以下,KAFO使用群)の2群に分類し,各群の調査項目をShapiro-Wilk検定の後,t検定またはWilcoxon検定にて比較した。2群間の比較で有意差を認めた調査項目を多重共線性に配慮し独立変数として設定し,AFO移行群とKAFO使用群を従属変数としてロジスティック回帰分析を行った。その後,選択された項目についてROC曲線の分析を行い,カットオフ値を算出した。有意水準は5%とした。


【結果】

AFO移行群は16名,KAFO使用群は15名であった。ロジスティック回帰分析の結果,麻痺側膝関節伸展の自動ROMのみが抽出された(オッズ比0.93,95%信頼区間0.89-0.97,p=0.001,判別的中率81.0%)。ROC曲線より算出したカットオフ値は端座位での自動膝関節伸展角度42.5°(ROC曲線下面積0.95,感度87.5%,特異度93.3%)であった。


【結論】

発症10日目にKAFOを必要とした脳卒中片麻痺者の約半数は発症1ヶ月後にAFOへ移行していた。急性期脳卒中片麻痺者の麻痺側膝関節伸展の自動ROMは,発症10日目から3週間後の短下肢装具への移行を高い精度で予測できる因子であり,KAFOの作製の是非を検討する際の一指標に成り得る可能性があると思われた。