第52回日本理学療法学術大会

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日本神経理学療法学会 » 口述発表

[O-NV-11] 口述演題(神経)11

2017年5月14日(日) 09:00 〜 10:00 B3会場 (東京ベイ幕張ホール No. 6)

座長:神沢 信行(甲南女子大学看護リハビリテーション学部理学療法学科)

日本神経理学療法学会

[O-NV-11-1] パーキンソン病の認知機能低下が入院リハビリテーション効果に及ぼす影響と有酸素運動の効果についての検討

本島 拓哉1, 内野 克尚2, 嶋本 稔也1, 荒瀬 健二郎1, 山口 悌示1, 小出 達也2, 内野 誠2 (1.総合リハビリテーションセンター城南病院リハビリテーション部, 2.総合リハビリテーションセンター城南病院神経内科)

キーワード:パーキンソン病, FAB, 有酸素運動

【はじめに,目的】パーキンソン病(PD)の認知機能障害は病初期よりみられ,遂行機能低下や注意機能低下などの前頭葉症状を呈することが指摘されている。認知機能低下は,PDに対するリハビリテーション(リハ)効果の阻害因子になっている可能性がある。一方,認知機能障害を有する患者に対する有酸素運動が,認知機能改善に有効であるとの報告もされている。しかし,現在,認知機能が低下したPD患者に対する効果的なリハの報告は少ないのが現状である。そこで今回,我々は,PD患者において,認知機能低下が入院リハ効果に与える影響について検討すると共に,認知機能が低下したPD患者に対し,有酸素運動がどのような効果をもたらすかを明らかにする。

【方法】X年1月からX+2年9月までの期間に当院で入院リハを施行したPD患者128例のうち,PDDに関連しないアパシー,抑うつ,幻覚妄想症状,他疾患による運動機能障害を合併した症例を除外した62例を対象とし,認知機能をMontreal Cognitive Assessment(MoCA),Frontal Assessment Battery(FAB),Mini Mental State Examination(MMSE)で評価し,低下群と正常群に分けた。入院リハ効果はFIM effectiveness(FIM利得の天井効果を補正した値)を用い,両群間でのリハ効果を比較検討した。更にFAB低下群に対して有酸素運動を行った群(強化群)と従来の理学療法を行った群(対照群)に分け,FAB値の改善を比較検討した。

【結果】1)入院リハ効果は,MMSE,MoCAにおいて低下群,正常群の両群間で有意差はみられなかったが,FABにおいては,12/13点間をcut offとすると,正常群に比べ低下群で有意(P=0.049)にリハ効果が低かった。2)更にFAB低下群において有酸素運動強化群(8例)と対照群(17例)を比較したところ,有酸素運動強化群は有意にFABが改善(P=0.0204)していた。入院リハ効果については,有意差はつかなかったもののFIM effectivenessが改善している傾向(P=0.0505)がみられた。

【結論】FAB値が12点以下の症例では,正常群と比べ,入院リハ効果が低下することが示唆された。つまりPD患者の認知機能低下は入院リハ効果と関連があり,認知機能評価スケールとして,FABが有用であると考えられる。また,認知機能が低下したPD患者に対してまず,有酸素運動を行うことにより認知機能が改善する可能性があり,入院リハの効果を高めることが示唆された。