第52回日本理学療法学術大会

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日本呼吸理学療法学会 » 口述発表

[O-RS-02] 口述演題(呼吸)02

2017年5月13日(土) 15:30 〜 16:30 A6会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室303)

座長:木村 雅彦(北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科理学療法学専攻), 座長:鵜澤 吉宏(亀田総合病院リハビリテーション室)

日本呼吸理学療法学会

[O-RS-02-3] 肺移植後の身体活動性が遠隔期の骨格筋形態機能および運動耐容能に及ぼす影響
―a longitudinal study―

大島 洋平1, 佐藤 晋1, 宮坂 淳介1, 吉岡 佑二1, 中谷 未来1, 島村 奈那1, 玉木 彰2, 陳 豊史3, 伊逹 洋至3, 松田 秀一1 (1.京都大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2.兵庫医療大学大学院医療科学研究科, 3.京都大学医学部附属病院呼吸器外科)

キーワード:肺移植, 身体活動性, 運動耐容能

【はじめに,目的】

我々は第51回大会において肺移植後遠隔期の運動耐容能には肺機能に加えて骨格筋機能が重要であることを報告した。当院での肺移植後リハビリプロトコールでは筋力強化や身体活動性向上を中心とした介入を術後3ヶ月まで行っているが,地元への帰省に伴いフォローが終了となることから自宅での身体活動性が十分に確保できていない可能性がある。肺移植後の身体活動性は心身機能を良好に保つ上で重要であると考えられるが,その臨床的意義を縦断的に検討した報告は極めて少ない。本研究の目的は,1)肺移植後の身体活動性を明らかにすること,2)身体活動性が骨格筋の形態機能変化および運動耐容能の回復に及ぼす影響を縦断的に検討すること,の2点とした。


【方法】

本研究は当院における肺移植前後の前向き観察研究からデータを抽出して解析を行った。対象は2013年4月から2015年10月までに当院にて肺移植を施行した60例のうち,16歳以上かつ術後1年まで追跡可能であった32例(46±13歳,男性18例)とした。原疾患は間質性肺炎が約半数を占めており,術式は生体肺移植13例(両側12例),脳死肺移植19例(両側7例)であった。調査項目は,一般情報,肺機能(%FEV1),脊柱起立筋の断面積(ESMCSA)および筋内脂肪変性の程度,膝伸展筋力(QF),6分間歩行距離(6MWD),身体活動性(PAL)とした。なお,脊柱起立筋の定量評価には胸部CT画像を用い,ESMCSAは第12胸椎レベルにて,筋内脂肪変性の程度は平均CT値(ESMCT)にて評価した。身体活動性はOMRON社製の活動量計を用いて連続7日間における1日当たりの平均歩数を算出した。統計解析にはSPSSを使用し,術後の各パラメータの経時変化を検討し,PALと各パラメータの関連性について解析した。


【結果】

%FEV1は術後6ヶ月まで有意に改善し,6MWDは術後1年まで改善した。ESMCSA,ESMCTおよびQFは術後3ヶ月で低下し,ESMCSA,QFは術後6ヶ月以降で術前レベルに改善したのに対し,ESMCTは術後1年でも回復が遷延した。PALは術後入院期間中から術後3ヶ月までは対象者平均で5000歩以上を維持して推移したが,術後3ヶ月以降は有意に低下し,術後6ヶ月では平均で5000歩を下回った。術後3ヶ月および術後6ヶ月でのPALと同時期での6MWDには有意な正の相関を認め,術後3ヶ月で5000歩以上のPALが得られた症例の6MWDは450mを上回り,実用的な屋外歩行能力の獲得に至った。しかし,術後3ヶ月以降でPALが減少した症例ほど,ESMCTの低下が顕著であり,術後1年での6MWDの回復が遷延した。


【結論】

肺移植後は呼吸機能の改善に伴い,運動耐容能や身体活動性は早期に回復を認めた。しかしながら,身体活動性はリハビリ介入を終了した3ヶ月以降では減少する症例が多く,身体活動性の低下は骨格筋脂肪変性の進行を助長し,運動耐容能の回復を妨げる要因となっていた。肺移植後遠隔期における身体活動性の維持向上に向けた取り組みが必要である。