第52回日本理学療法学術大会

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日本地域理学療法学会 » 口述発表

[O-TK-02] 口述演題(地域)02

2017年5月12日(金) 12:50 〜 13:50 A4会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室301)

座長:野尻 晋一(介護老人保健施設清雅苑リハビリテーション部)

日本地域理学療法学会

[O-TK-02-1] 熊本地震における大阪JRATの初期活動について
理学療法士の視点から

大垣 昌之1 (1.社会医療法人愛仁会愛仁会リハビリテーション病院, 2.国立循環器病研究センター)

キーワード:熊本地震, JRAT, 初期活動

【はじめに,目的】2016年4月16日に発生した熊本地震において,リハビリテーション(以下リハ)の支援活動を組織的に行うため,JRAT(Japan Rehabilitation Assistance Team)の活動が行われた。現地対策本部の設立と先遣隊による情報収集のあと,23日より全国からの派遣チームの活動が開始となり,大阪JRATの第1隊として参加した。初動体制から関わった活動を整理し,見えてきた課題などについて考察を交え報告する。

【方法】4月18日付けのJRAT代表からの養成を受け,大阪府理学療法士会では災害時支援対策特別委員会メンバーを中心に初期体制を構築した。大阪JRAT第1隊は4月23日から26日まで活動を開始した。構成は医師1名,理学療法士2名で益城町を中心に活動を開始した。

【結果】DMAT(災害派遣医療チーム),JMAT(日本医師会災害医療チーム)などの他の医療チームや保健師定時ミーティングに参加し,情報収集とJRATの活動広報を行った。具体的には,災害前にリハ支援を受けていたが現在は受けていない方の紹介を受け,廃用予防のための動作練習,歩行練習,家族指導,環境調整などを行った。次第に,各避難所を担当している保健師から依頼が増え,JRATが認識されるようになった。避難所支援活動としては①避難所内の要援護者(特に高齢者・要支援者・要介護者)のリハ・トリアージ②生活不活発病(活動性低下)に対する助言および介入③生活環境の評価(福祉用具などの利用も考慮)④他チーム(医療班・保健師)へ情報提供および共有⑤地域内既存の医療・介護サービスへの連携などが挙げられる。避難所支援以外にも初期隊として①支援体制のスタンス明確化②指示命令系統の確認③活動記録の方法決め④継続性を担保するための後続隊への申し送り標準化などを行った。

【結論】大阪府理学療法士会では,2014年度より災害時支援対策特別委員会が中心となり,災害支援対策の研修会を実施してきた。初期対応メンバーは,災害時研修を企画および受講しており災害支援の知識を有していたことで大きな混乱はなく支援活動を行うことができた。災害時の支援として,理学療法士としてできることは多いが,災害時はあくまで組織だった行動が大事であり,その事を平時より知識として保有していることが重要である。避難所支援においての初期時は,情報が錯綜しており他のチームとの連携が重要であるが,特に保健師チームとの連携が重要である。情報共有のみでなくJRATの活動内容を理解していただくためにも,初期より保健師チームのミーティングに参加することは重要である。避難所生活において高齢者や障がい者の,生活不活発病および震災関連死につながることが東日本大震災でも明らかとなり,組織的なリハ支援を行うためにJRATとして活動が行われた。継続的な支援をするためには,今回の活動を振り返り,活動マニュアルとして残しておくことが大切である。