第52回日本理学療法学術大会

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日本地域理学療法学会 » 口述発表

[O-TK-03] 口述演題(地域)03

2017年5月12日(金) 14:10 〜 15:10 A4会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室301)

座長:樋口 由美(大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科)

日本地域理学療法学会

[O-TK-03-3] 地域在住高齢者における転倒と多様な下肢筋力・筋機能との関連についての前向きコホート研究

佐藤 駿介1, 池添 冬芽1,5, 磯野 凌1,5, 神谷 碧1,5, 加藤 丈博1,5, 佐伯 純弥1,5, 山縣 桃子1,5, 田中 真砂世1,5, 正木 光裕2,3,5, 田原 康玄4,5, 松田 文彦4,5, 坪山 直生4,5, 市橋 則明1,5 (1.京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻, 2.新潟医療福祉大学医療技術学部, 3.新潟医療福祉大学運動機能医科学研究所, 4.京都大学大学院医学研究科附属ゲノム医学センター, 5.ながはま0次コホート研究グループ)

キーワード:転倒, 運動機能, 前向きコホート研究

【はじめに,目的】

これまで地域在住高齢者における転倒と運動機能との関連については数多くの報告がされており,バランス能力や下肢筋力との関連が明らかにされている。しかし,転倒と下肢筋力との関連に着目した研究の多くは膝関節伸展筋力のみを指標とした研究であり,膝伸展筋力以外の様々な下肢筋力との関連,あるいは筋力以外に筋パワーや筋持久力など多様な筋機能との関連について,大規模サンプルで前向きコホート研究にて調べた報告は見当たらない。高齢者の転倒予防のための運動プログラムを処方する際,どのような下肢筋力・筋機能が特に転倒と関連するのかを明らかにすることは重要である。

本研究の目的は地域在住高齢者を対象に,転倒と多様な下肢筋力・筋機能との関連について,1年間の前向きコホート研究にて明らかにすることである。



【方法】

対象は65歳以上の地域在住高齢者でベースライン時に運動機能評価を行った1506名中,1年後に転倒追跡調査を実施できた562名(男性201名,女性361名,年齢70.5±4.2歳)とした。なお,重度の神経学的・整形外科的障害や認知障害を有する者は対象から除外した。

ベースライン測定として運動機能の評価を行い,1年後に転倒歴についてのアンケート調査を実施した。転倒歴については1年間における転倒の有無を調査し,一回以上の転倒歴を「転倒あり」とした。

運動機能として下肢筋力(膝関節伸展,股関節伸展・屈曲・外転,足趾屈曲,セッティング),下肢筋パワー(5回立ち座り時間),下肢筋持久力(段差昇降テスト),バランス能力(開眼片脚立位保持時間,TUG),通常・最大歩行速度を測定した。

下肢筋力はそれぞれ2回測定し,その最大値からトルク(Nm)を算出した。なお,セッティング筋力は専用の筋力測定機器(アルケア製ロコモスキャン)を用いた。段差昇降テストは利き脚を20cm台に乗せたまま非利き脚を30秒間でできるだけ速く昇降させた際の回数を測定した。

統計処理として,1年間の転倒の有無を従属変数,ベースライン時の年齢,性別,下肢筋力,5回立ち座り時間,段差昇降テスト,開眼片脚立位保持時間,TUG,歩行速度を独立変数として多重ロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を行った。有意水準は5%とした。



【結果】

転倒調査の結果,ベースライン測定からの1年間で転倒歴があったのは85名(15.1%)であった。多重ロジスティック回帰分析の結果,股関節外転筋力(オッズ比1.099)と段差昇降テスト(オッズ比1.035)が転倒の有無に関連する有意な因子として抽出された。



【結論】

地域在住高齢者を対象に転倒と運動機能との関連について多面的に検討した結果,転倒に関連する因子として股関節外転筋力と段差昇降テストが抽出されたことから,地域在住高齢者の転倒予防のためには股関節外転筋力や下肢筋持久力の維持向上に対する介入が重要である可能性が示唆された。