The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本理学療法教育学会 » ポスター発表

[P-ED-02] ポスター(教育)P02

Fri. May 12, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本理学療法教育学会

[P-ED-02-4] 痛みの神経生理学に関する講義が理学療法学科3年生の痛みに対する理解に及ぼす効果

三根 幸彌1,2, Sam Gilbert3, 中山 孝1,2, 土屋 順子1,4 (1.東京工科大学医療保健学部理学療法学科, 2.南オーストラリア大学International Centre for Allied Health Evidence, 3.Club 360, 4.信州大学大学院医学系研究科保健学専攻)

Keywords:痛み, 神経生理学, 理学療法教育

【はじめに,目的】

持続性疼痛に対するマネジメントは,従来の生物医学モデルから生物心理社会モデルへの転換を迫られている(O'Sullivan, 2012)。その潮流に伴い,理学療法教育に痛みの神経生理学に関してエビデンスに基づいた知見を取り入れる必要がある(Jones & Hush, 2011)。しかしながら,本邦の教育機関においては,痛みについて十分な教育が行われているとは言い難い。本研究は,痛みの神経生理学に関する講義が理学療法学科3年生の痛みに対する理解に及ぼす効果を検討することを目的とした。


【方法】

対象は2016年に東京工科大学医療保健学部理学療法学科3年次に在籍していた78名の学生(平均年齢20.6±0.7歳,うち女性29人)とした。研究デザインは前向き症例シリーズ報告とした。80分の講義ではスライドと口述説明によって,末梢組織における侵害受容や脊髄と脳における中枢感作の機序などについて解説した(Butler & Moseley, 2013)。評価尺度は12項目から成る質問紙(Catley, et al., 2016)とし,英語からの順翻訳と逆翻訳を2人の著者がそれぞれ独立して行った後,議論ののち日本語版を作成した。質問紙にかける時間は1回あたり3分とし,80分の講義の前後と講義の1か月後に計3回行った。また,講義終了時に主観的な関心度,難易度,理解度をVisual Analogue Scaleを用いて評価した。質問紙の得点の変化における統計学的有意性について,分散分析を行った後に,多重比較として対応のあるt検定とBonferroniの補正を用いて検討した。有意水準を5%未満とした。臨床的有意性については,群内での効果量(Cohen's d)と95%信頼区間(CI)を用いて検討した。効果量の判定にはCohenの基準を用いた(Cohen, 1988)。また,関心度,難易度,理解度と得点の変化についての相関係数を求めた。統計処理にはMicrosoft Excel2016を用いた。


【結果】

質問紙の得点は,講義直前で6.5±1.7点,講義直後で8.1±1.5点,1か月後で8.3±1.4点であり,講義直前と比較して直後と1か月後では有意に改善し(p<0.01),講義直後と1か月後では有意差はみられなかった。効果量は講義直前と直後の比較で0.99(95%CI 0.74-1.24),講義直前と1か月後の比較で1.11(95%CI 0.86-1.35)であり,ともに大きい効果量を示した。また,主観的な関心度,難易度,理解度と得点の変化についての有意な相関は認められなかった。


【結論】

1回80分の講義が,理学療法学科学生の痛みの神経生理学に関する理解を短期的に改善させる可能性が示唆された。