[P-ED-07-1] 臨床実習科目の成績評定
―ルーブリック評価の導入―
キーワード:臨床実習成績評定, ルーブリック評価, 評価基準
【はじめに,目的】
本学科で4年次前期に開講する「理学療法臨床実習I・II」はそれぞれ8週間の臨床実習科目である。この科目の到達度評価をより的確なものにしたいと考え,新たに臨床実習評価表(以下「新評価表」)を作成した。「新評価表」にはルーブリック評価を導入した。ルーブリック評価とは小項目毎の評価基準を具体的に記述で示した評価法のことである。現在使用している評価表(以下「現評価表」)と「新評価表」の評定結果を比較検討したので報告する。
【方法】
本年度の実習施設75施設のうち無作為に選んだ25施設の臨床実習指導者に担当学生の評定を「現評価表」と「新評価表」で行い,併せてアンケートを実施した。「現評価表」は大項目が6,小項目が34ある。「新評価表」は「適性・態度」,「知識」,「技能」の3領域を大項目とし,その下に28の小項目を配置している。両評価表とも総合評定は優,良,可,不可の4段階でそれぞれ3点,2点,1点,0点と点数化した。小項目も4段階で評定するが,両評価表を比較するため「現評価表」の小項目を「新評価表」に倣い3領域(大項目)に組み替えた上でそれぞれ3点,2点,1点,0点と点数化した。まず,総合評定と全小項目の平均点の相関を評価表別に調べ,次に両評価表の大項目毎の平均点の相関を調べた。統計処理はSpearmanの順位相関係数を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
回答とともに同意を得られたのは21名であった。平均年齢34.4±8.5歳,理学療法士経験年数11.5±8.2年,臨床実習指導年数6.2±5.5年であった。総合評定と全小項目平均点の相関係数は「現評価表」ρ=0.818(p<0.01),「新評価表」ρ=0.823(p<0.01)であった。両評価表の大項目毎の相関係数は「適性・態度」ρ=0.781,「知識」ρ=0.723,「技能」ρ=0.722で,何れも有意(p<0.01)に強い相関を示した。「新評価表」に関するアンケートでは「適性・態度」で「評価しやすかった」90.5%,「どちらとも言えない」9.5%,「知識」で57.1%,42.9%,「技能」で71.4%,28.6%であった。「評価しにくかった」は何れの大項目でも0%であった。自由記載でも「新評価表」は「優・良・可・不可が具体的に説明され評価しやすかった」,「記載に要する時間が短くてすんだ」等の回答が多かった。
【結論】
評価表内の項目間や評価表どうしの相関を調べたのは,相関が低いと双方が違った側面を評価している可能性がありそれを確認するためである。双方に有意な相関があり,「新評価表」は妥当な評価表であると思われた。またアンケートや自由記載で好意的な回答が多かったが,これは小項目毎の評価基準を具体的に文章で示し,到達度をより理解しやすくなったことが大きな要因と思われた。ルーブリック評価を取り入れた評価法は,実習指導者の時間的負担軽減にもつながり,総合的な実践を伴う臨床実習の評価法として活用できる可能性が示唆された。
本学科で4年次前期に開講する「理学療法臨床実習I・II」はそれぞれ8週間の臨床実習科目である。この科目の到達度評価をより的確なものにしたいと考え,新たに臨床実習評価表(以下「新評価表」)を作成した。「新評価表」にはルーブリック評価を導入した。ルーブリック評価とは小項目毎の評価基準を具体的に記述で示した評価法のことである。現在使用している評価表(以下「現評価表」)と「新評価表」の評定結果を比較検討したので報告する。
【方法】
本年度の実習施設75施設のうち無作為に選んだ25施設の臨床実習指導者に担当学生の評定を「現評価表」と「新評価表」で行い,併せてアンケートを実施した。「現評価表」は大項目が6,小項目が34ある。「新評価表」は「適性・態度」,「知識」,「技能」の3領域を大項目とし,その下に28の小項目を配置している。両評価表とも総合評定は優,良,可,不可の4段階でそれぞれ3点,2点,1点,0点と点数化した。小項目も4段階で評定するが,両評価表を比較するため「現評価表」の小項目を「新評価表」に倣い3領域(大項目)に組み替えた上でそれぞれ3点,2点,1点,0点と点数化した。まず,総合評定と全小項目の平均点の相関を評価表別に調べ,次に両評価表の大項目毎の平均点の相関を調べた。統計処理はSpearmanの順位相関係数を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
回答とともに同意を得られたのは21名であった。平均年齢34.4±8.5歳,理学療法士経験年数11.5±8.2年,臨床実習指導年数6.2±5.5年であった。総合評定と全小項目平均点の相関係数は「現評価表」ρ=0.818(p<0.01),「新評価表」ρ=0.823(p<0.01)であった。両評価表の大項目毎の相関係数は「適性・態度」ρ=0.781,「知識」ρ=0.723,「技能」ρ=0.722で,何れも有意(p<0.01)に強い相関を示した。「新評価表」に関するアンケートでは「適性・態度」で「評価しやすかった」90.5%,「どちらとも言えない」9.5%,「知識」で57.1%,42.9%,「技能」で71.4%,28.6%であった。「評価しにくかった」は何れの大項目でも0%であった。自由記載でも「新評価表」は「優・良・可・不可が具体的に説明され評価しやすかった」,「記載に要する時間が短くてすんだ」等の回答が多かった。
【結論】
評価表内の項目間や評価表どうしの相関を調べたのは,相関が低いと双方が違った側面を評価している可能性がありそれを確認するためである。双方に有意な相関があり,「新評価表」は妥当な評価表であると思われた。またアンケートや自由記載で好意的な回答が多かったが,これは小項目毎の評価基準を具体的に文章で示し,到達度をより理解しやすくなったことが大きな要因と思われた。ルーブリック評価を取り入れた評価法は,実習指導者の時間的負担軽減にもつながり,総合的な実践を伴う臨床実習の評価法として活用できる可能性が示唆された。