第52回日本理学療法学術大会

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[P-ED-08] ポスター(教育)P08

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本理学療法教育学会

[P-ED-08-3] 実習前OSCEの導入による臨床実習前後での社会人基礎力の獲得について

村上 賢治, 鈴木 裕治, 大和田 宏美 (仙台青葉学院短期大学リハビリテーション学科理学療法専攻)

キーワード:OSCE, 社会人基礎力, 臨床実習

【はじめに,目的】経済産業省は,「職場や地域社会の中で多様な人々とともに仕事を行っていく上で必要な基礎的な能力」を「社会人基礎力」と定義し,意識的に育成していくことが重要としている。理学療法教育の中で,社会人基礎力に相当する能力の育成は,学内教育の中で行うには限界があるが,臨床実習では,学内教育で補えない対人関係やコミュニケーションスキル等の習得が可能である。学内教育の中で実施可能な客観的臨床能力試験(OSCE)は臨床実習に臨む学生の臨床技能を高めるために有用とされ,最近では理学療法教育機関でも多く試みられている。しかし,実習前OSCEの実施が,臨床実習において学生にどのような効果をもたらすのかを検証した研究はほとんどない。本研究の目的は,実習前OSCEの導入が臨床実習を通して,学生の社会人基礎力獲得にどのような影響をもたらすかを調査することである。

【方法】対象は,本学リハビリテーション学科理学療法学専攻学生で201X年度3年生54名(男性:17名,女性:37名,平均年齢:21.1±0.8歳),201Y年度3年生68名(男性:39名,女性:29名,平均年齢:21.1±1.8歳)の計122名とした。方法は,OSCE未実施であった201X年度3年生(OSCEなし群)と,OSCEを実施した201Y年度3年生(OSCE群)に対し,「社会人基礎力自己分析シート」を用いて,2回の総合臨床実習前後に3回調査した。「社会人基礎力自己分析シート」の項目は,前に踏み出す力(①主体性,②働きかけ力,③実行力),考え抜く力(④課題発見力,⑤計画力,⑥想像力),チームで働く力(⑦発信力,⑧傾聴力,⑨柔軟力,⑩状況把握力,⑪規律性,⑫ストレスコントロール力)の3分類12能力要素からなり,5段階評価である。統計学的解析は,Mann-WhitneyのU検定を行い有意水準は5%未満とした。

【結果】OSCEなし群,OSCE群ともに臨床実習前に比べ臨床実習後では,①主体性,③実行力,④課題発見力,⑤計画力,⑥想像力において有意な上昇が認められた(p<0.01)。同様に,②働きかけ力,⑩状況把握力(p<0.05)においても有意な点数の上昇が認められた。また,OSCE群のみ⑫ストレスコントロール力に有意に上昇がみられた(p<0.01)。

【結論】本研究では,本学の理学療法学生において臨床実習を通して社会人基礎力の向上が認められた。このことは,臨床実習が学生にとって対象者や医療関係者等との対人関係を築くために有用であることが判明した。また,OSCE群において臨床実習前後ではストレスコントロール力が上昇した。近年,ストレスの高い環境での学外臨床実習等において,対人能力,コミュニケーション能力に起因した問題が増加傾向にある。実習前OSCEの導入は,このような問題の解決の手段として有効であることが示唆された。