第52回日本理学療法学術大会

講演情報

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-14] ポスター(基礎)P14

2017年5月12日(金) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-14-2] 2種類の後方歩行による動的バランス能力への効果について

千葉 朋加, 牧野 均 (北海道文教大学)

キーワード:後方歩行, 後方継ぎ足歩行, 動的バランス

【はじめに】加齢に伴い感覚障害や筋力低下によりバランス能力が低下し転倒リスクが高くなるため,横歩きや後方歩行などの応用歩行を転倒予防対策として行う。動的バランス能力の評価指標として,ファンクショナルリーチテスト(以下FRT)やCross testがあるが,姿勢制御方略の違いにより相関がない。後方歩行に関する研究は筋活動や特徴など多く存在し,パーキンソン病患者の前屈姿勢軽減と安定性限界の範囲が拡大した。しかし,健常者を対象とした研究がない。よって本研究は,後方歩行課題の相違と足底への感覚刺激の生むが動的バランス能力に与える影響を,FRTとCross testを用いて評価する。【方法】被験者は健常学生22名(男性12名,女性10名)とした。Cross testの測定は,壁から2mの位置にある重心動揺計上で,5cm開脚位で両上肢を胸の前で組み,壁の一点を注視する。3秒間の安静立位後にメトロノームに合わせ各方向へ3秒間で重心を最大移動し3秒間で復位,最後は3秒間の安静立位で終了し全体で30秒間計測した。FRTの計測は,2回計測し,移動距離の大きい方を採用した。課題は,自然な後方歩行を行うA群,紐上を後方歩行するB群,継ぎ足で後方歩行するC群,紐上を継ぎ足で後方歩行するD群,コントロールをE群とし,全対象者にランダムで行った。FRT結果とCross testのデータから矩形面積,X・Y方向最大振幅を算出する。統計処理は,正規性のあるものには対応のあるt検定を,正規性のないものにはWilcoxon符号付順位検定を用い,有意水準を5%とした。【結果】FRTは,C・D群において課題試行により有意に増加した。Cross testでの矩形面積は,B群において課題思考により有意に増加した。X方向最大振幅は,A・B群において課題施行により有意に増加した。Y方向最大振幅には,各群の課題施行前後で有意な差は認められなかった。【結論】FRTでは,紐の有無に関与せず後方継ぎ足歩行が影響を与えた。後方歩行は,下肢の相対的筋出力が増加し,継ぎ足歩行では中殿筋の金活動が増加する。つまり,後方歩行に加えた継ぎ足歩行により股関節周囲筋が賦活し,股関節を中心とした姿勢制御が可能となりリーチ距離の延長に繋がったと考える。Cross testのX方向最大振幅においては,後方歩行課題で有意に増加した。安静立位時は前後方向への制御を下腿三頭筋の筋出力により制御される一方,後方歩行では前脛骨筋が下肢の安定性を高める役割を担う。つまり,後方歩行により下腿前後面の筋出力の均衡化により足関節周囲が安定しバランス能力向上に繋がったと考える。さらに,後方歩行でも紐有群は,X方向最大振幅の増加により矩形面積も有意に増加した。紐が足底のメカノレセプターを刺激したこと,また足底で紐を探す探索課題により足底感覚への注意が促され,体性感覚情報処理の促通へと繋がったと考える。