The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-22] ポスター(運動器)P22

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-22-4] 回復期病院の高齢患者における生活自立に関連する因子の検討

伯川 聡志1, 阿部 祐樹1,2, 河原 常郎1,3, 大森 茂樹1,4 (1.医療法人社団鎮誠会, 2.筑波大学大学院人間総合科学研究科, 3.千葉大学大学院工学研究科, 4.千葉大学大学院医学研究院神経内科学)

Keywords:要介護, 転倒予防, 歩行能力

【はじめに,目的】

要介護となる高齢者の25%が運動器疾患によるものと言われており,要介護の高齢者は自立している高齢者の3倍の転倒リスクがあると言われている。回復期病院に入院した高齢者が,要介護の状態で退院となる症例は少なくない。従って,その関連因子について検討することは,介護予防の観点においても重要であると考える。本研究は,介護保険申請の有無が身体機能のどのような因子に依存するかを検討した。


【方法】

対象は運動器疾患により回復期病院に入院となった高齢者59例(男性14例,女性45例,年齢78.2±6.2歳)とし,疾患部位は股関節28例,膝関節14例,脊柱8例,足関節3例,その他3例であった。受傷前から介護保険を利用している症例,中枢神経疾患の既往のある症例,認知機能低下の症例(MMSE24点未満)は除外した。調査項目は介護保険の申請の有無,受傷原因,同居者の有無,歩行補助具の使用状況,疼痛(NRS),FIMとし,身体機能はBerg Balance Scale(BBS),10m歩行,TUG,6分間歩行(6MD)を測定した。統計解析は,介護保険申請群と非申請群の2群に分け,それぞれの項目をT検定,Mann-WhitneyのU検定,X2検定を行った。有意水準は5%とした。その後,介護保険申請の有無を従属変数とし,単変量解析で有意であった項目を独立変数としたロジスティック回帰分析を用いて検討した。


【結果】

介護保険申請群は33例,非申請群26例であった。受傷原因,同居者の有無,歩行補助具の使用状況,疼痛,BBSは2群間に有意差を認めなかった。FIM(P=0.001)は2群間に有意差を認め,非申請群が高値であった。身体機能は10m歩行(P=0.005),TUG(P=0.001),6MD(P=0.001)に有意差を認め,非申請群が高値であった。ロジスティック回帰分析の結果,6MD(P=0.041,オッズ比:0.99,95%信頼区間:0.98~1.00)のみ調整変数投入後も有意な変数として選択された。


【結論】

介護保険申請の有無に関わる因子として6MDが挙げられた。Spector(1989)は,買い物などの手段的動作の自立が食事やトイレ動作などの基本的日常生活動作に先行すると述べており,手段的動作において歩行の耐久性は重要であると言える。また,植屋(2015)は体力や歩行の耐久性がADLやQOLと極めて重要な相互関連があると述べており,本研究は過去の報告と同様の結果を得た。以上より,歩行の耐久性が介護予防の観点においても重要であると考えられた。本研究結果は,リハビリテーションの介入内容や方針を設定する一助となり得ると考えられる。