第52回日本理学療法学術大会

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-32] ポスター(運動器)P32

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-32-5] 慢性腰痛を有する重度脊柱変形者に対する腰痛手帳を活用した運動療法効果

北村 拓也1,2,3, 佐藤 成登志2,3, 渡辺 慶3,4, 神田 賢2, 多田 葉月5, 山本 智章3 (1.新潟リハビリテーション大学, 2.新潟医療福祉大学ロコモ予防研究センター, 3.新潟リハビリテーション病院, 4.新潟大学医歯学総合病院, 5.新潟医療福祉大学大学院)

キーワード:慢性腰痛, 腰痛手帳, 運動療法

【はじめに,目的】

慢性腰痛に対する運動療法は,国内外から質の高い研究報告が数多くされており,高い有用性が示されている。運動療法の目的としては,疼痛の軽減や身体機能および,QOLの向上などであるが,慢性腰痛には心理・社会的要因の影響もあり,身体機能面だけでなく認知行動面も含めたアプローチが重要とされている。認知行動面に対する一つのアプローチとして,冊子等の使用が有用とされており,教育・運動・自己理解が重要と考えられている。しかし,これまでの介入研究では診療報酬の枠組みを越える3ヵ月以上の長期介入であり,重度の脊柱変形者に対する運動療法の研究報告は極めて少ない。

そこで,本研究は慢性腰痛を有する重度脊柱変形者に対して腰痛手帳を活用した運動療法を3ヵ月間実施し,疼痛や身体機能,QOLなどに与える影響を明らかにすることを目的とした。

【方法】

対象は,当院腰痛外来に来院し,脊柱変形疾患と診断された16名(男性3名,女性13名;平均年齢69.8±4.02歳,平均体重51.4±7.2kg,平均BMI22.0±3.1)とした。疾患の内訳は,変性後弯症5例,変性後側弯症5例,変性後側弯症とTHA術後例2例,変性側弯症と脊柱管狭窄症の合併例2例,腰椎すべり症と脊柱管狭窄症の合併例1例,変性後側弯症と脊柱管狭窄症の合併例1例であった。

介入内容は,腰痛手帳を活用した外来理学療法と自主運動の併用プログラムとした。腰痛手帳は,教育・エクササイズ・疼痛管理の3部構成の内容となっており,個人にあったエクササイズを指導・提供し,自主運動に反映させた。介入頻度は週1度とし,3ヵ月間実施した。

アウトカムは腰痛強度(腰痛VAS),QOL(日本整形外科学会腰痛疾患質問票;JOABPEQ),アライメント(X線脊柱骨盤パラメーター),6分間歩行テストとした。

統計解析では,解析ソフトR.2.8.1を使用し,介入前後の各種データを対応のあるt検定またはウィルコクソンの符号付順位和検定を用い,有意水準は5%とした。

【結果】

結果を中央値(下位25%-上位75%)で示す。腰痛VASは介入前55(45-70)mmから介入後30(30-50)mmと有意に軽減(p=0.007)し,JOABPEQでは疼痛関連障害(介入前43(29-50),介入後43(43-93),p=0.039),腰椎機能障害(介入前75(50-83),83(71-91.5),p=0.014),社会生活障害(介入前51(35-54),介入後46(43-63.5),p=0.022)のドメインで有意な改善が認められた。

その他のJOABPEQドメイン,および脊柱骨盤パラメーター,6分間歩行テストでは有意な改善は認められなかった。

【結論】

本研究の結果,慢性腰痛を有する重度脊柱変形者に対する3ヵ月間の腰痛手帳を活用した運動療法では,アライメントの変化や連続歩行能力の向上は得られなかったが,疼痛の軽減やQOLの向上が得られ,介入の有用性が示唆された。