第52回日本理学療法学術大会

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[P-MT-35] ポスター(運動器)P35

2017年5月13日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-35-5] 人工股関節全置換術後におけるWOMACのADL下位尺度とTUGの関係
―カテゴリーB,Cの特徴―

青沼 健二1, 丸山 正昭2, 天野 之雄1, 佐藤 元信1, 平野 茉里1, 山田 一貴1, 宮沢 京子1, 龜井 志帆子1 (1.JA長野厚生連篠ノ井総合病院リハビリテーション科, 2.JA長野厚生連篠ノ井総合病院整形外科)

キーワード:人工股関節全置換術, WOMAC, TUG

【はじめに,目的】

前回大会にて我々は,人工股関節全置換術(以後,THA)前後の患者立脚式評価Western Ontario McMaster Osteoarthritis Index(以下,WOMAC)とTimed Up and Go test(以下,TUGの関係性をカテゴリー別に検討した。その結果,THA術後はカテゴリーに関係なくWOMACのADLスコア(スコアリング後の点数)とTUGが負の相関があると報告した。しかし,ADL全体としての相関は認められたが,下位尺度各項目における関係性は明確になっていない。そこで,今回はWOMACのADL17項目のうち,どの項目がTUGと相関しているかカテゴリーB(両側股関節罹患),C(多関節罹患)で検証する。

【方法】

対象は,当院にて2011年1月から2016年3月までに初回片側THAを施行された患者149名(男性19名,女性130名)とした。全例において術者は同一者で,術式は後側方侵入であった。日本整形外科学会股関節機能判定基準に準じ,カテゴリーB(B群),カテゴリーC(C群)に分けた。内訳は,B群106名(63.2±9.5歳,男性13名,女性93名),C群43名(69.2±8.8歳,男性3名,女性40名)であった。評価時期は,退院後1ヶ月の再診時(以下,術後)とした。評価項目は,WOMAC(ADL項目)とTUGとした。評価方法は,WOMACのADL項目の得点(以下,ADL得点)とした。TUGは3回測定し,平均値を測定値(秒)とした。統計方法は,各群内術後のTUGとADL得点の関係をそれぞれSpearman順位相関係数で求めた。統計処理にはIBM SPSS Version 22を使用し,有意水準は5%未満とした。

【結果】

今回はADL得点とTUGの関係であり,正の相関が認められた。B,C群で正の相関が認められた共通項目は,椅子から立ち上がる,立位保持,平地歩行,買い物に行く,浴槽の出入り,布団の片付けなどの重作業の家事,6項目であった。B群のみは,前かがみになって床に手をつく,1項目であった。またC群のみは,階段を降りる,階段を昇る,ベッドから起き上がる,ベッドに寝る,座位保持,トイレ動作,布団をたたむなどの軽作業の家事,7項目であった。

【結論】

本研究では,THA術後のWOMACのADL下位尺度とTUGの関係性をカテゴリーB,Cに分け検討した。

B,C群で相関が共通している項目は,TUG動作に含まれる項目が多かった。また,浴槽出入りや重作業の家事などの,片脚支持や物を持つという難易度の高い応用動作が歩行能力と関係していると示唆された。B群では前かがみになって床に手をつく動作が容易になるほど,歩行能力の改善があるということがわかった。これは,非術側股関節過屈曲動作や腰部柔軟性,膝関節機能が良好である為と考えられた。

また,C群ほど相関項目が増え,階段昇降やベッド上動作,トイレ動作,軽作業の家事,とADLでも広範囲にわたるということが示唆された。これは膝や腰部機能の影響を受けている為だと考えられた。