The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

Presentation information

日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-39] ポスター(運動器)P39

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-39-1] 大腿骨近位部骨折患者における立ち上がり動作時の足圧分析と立位時患側下肢最大荷重率の関係

吉田 啓晃1, 三小田 健洋1, 大沼 雄海1, 中山 恭秀1, 安保 雅博2 (1.東京慈恵会医科大学附属第三病院リハビリテーション科, 2.東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座)

Keywords:大腿骨近位部骨折, 立ち上がり, 荷重率

【はじめに,目的】

大腿骨近位部骨折術後患者において,立位での患側下肢最大荷重率を患肢の機能回復の目安とする報告は多い。一方でKneissら(2015)は,床反力計を用いて大腿骨近位部骨折患者の立ち上がり動作を分析し,Berg Balance Scale(BBS)や歩行速度などの動作能力指標と相関が強いことから立ち上がり動作評価を提唱している。しかし,患側下肢荷重率と立ち上がり動作における床反力垂直成分から得られる値の関係は明らかではない。そこで,床反力垂直成分に近い足圧分析装置を用いて,立ち上がり動作時の足圧から得られる値と立位患側荷重率との関連を示すとともに,バランス能力指標との関連を検討した。


【方法】

大腿骨近位部骨折術後患者15名(平均79.6±9.0歳,術後24.5日)を対象に,足圧分析装置を用いて椅子からの立ち上がり動作と患側荷重率を計測した。使用機器はWinFDM-T(Zebris社製)とし,高さ45cmの椅子から左右の下肢に均等に荷重して立ち上がることを課題とした。Kneissらの方法を参考に,第1相のRFD(rate of force development)[N/s/kg],第2相のPeak vGRF(vertical ground reaction force)[N/kg]を左右下肢で算出し,立位保持3秒間の平均GRF[N/kg]を求めた。最大荷重率は,立位で最大荷重した場合の荷重量を体重で除した値[%]とした。また,バランス能力指標としてBBSとTimed“Up and Go”test(TUG)を測定した。統計は,RFD,Peak vGRF,立位保持GRFの患側/健側比を求め,一元配置分散分析にて比較し,最大荷重率との関連についてpearson相関係数を求めた。また,立ち上がり,患肢荷重率の各指標とバランス能力指標との関連についてspearman順位相関係数を求めた。有意水準は5%未満とした。


【結果】

立ち上がり動作における患側のRFDは11.5±6.4N/s/kg,Peak vGRFは4.1±0.9N/kgで,立位保持のGRFは4.4±1.5N/kgであった。各指標の患側/健側比はRFD0.60,Peak vGRF0.65であり,立位保持GRF0.84に比べて,有意に低値を示した。

立位での最大荷重率は77.4±16.8%で,RFDやPeak vGRFと有意な相関は認められなかった。バランス能力指標との相関は,患側RFDはBBS,TUGともにrs=0.6と有意な相関を示したが,Peak vGRF,最大荷重率はrs=0.1~0.4と相関は認められなかった。


【結論】

左右均等に荷重して立ち上がるような課題において,立位保持では比較的左右均等に荷重できていたとしても,立ち上がり動作においては差が生じていた。立位での患肢最大荷重率は簡便に計測でき,機能回復の指標として用いることが多いが,立ち上がり動作時の足圧から得られるRFDやPeak vGRFとの関連は低かった。つまり,立位で患側下肢に荷重できたとしても立ち上がり動作においては患側下肢の機能を十分に発揮できていないと考えられる。さらに,力発揮速度の評価とされるRFDはバランス能力指標と中程度の相関を示したことから,臨床的に有用である。