[P-MT-43-2] 人工膝関節置換術前後における歩行機能の推移と傾向
キーワード:人工膝関節置換術, 急性期, 歩行障害
【はじめに,目的】
人工膝関節置換術(以下,TKA)の件数は年々増加している中,急性期をはじめとした術後リハビリテーションを行う中で,術後約3週間時点の歩行機能はクリニカルパス上,退院後の転帰に直結しやすく,歩行機能の改善に要する期間も症例により多様である。そこで,TKA前後における歩行機能とそれに関わる因子について検討した。
【方法】
対象は平成28年6月から9月までの間に当院において片側TKAを施行された13名(男性3名,女性10名,年齢74.9±8.2歳,BMI25.6±2.4,原疾患:変形性膝関節症10例,関節リウマチ3例)とした。術前と術後約3週間の退院前に理学療法評価を行った。評価項目は術側,非術側の最大膝関節伸展筋力と最大股関節外転筋力,Functional Reach Test(以下,FRT)と片脚立位時間,術部Visual Analogue Scale(以下,VAS),10m歩行時間,Timed up and go test(以下,TUG),とした。筋力はHand-Held Dynamometer(アニマ社製μTas F-100)を使用し,トルク長と体重をもとに単位をkgm/kgとした。
対象者を術前,術後約3週間とも独歩可能であった群(以下,独歩群),術前,術後いずれかに歩行補助具を要した群(以下,補助具群)の2群に群分けした。分析は評価項目ごとに術前,術後で対応のあるt検定を行い,有意水準を5%とした。また,各群で術前,術後の項目間でPearsonの相関係数を算出し,関連性について検討した。
【結果】
独歩群は5名,補助具群は8名であり,年齢,BMIにおいて群間での有意差は認めなかった。術前と術後約3週間において,独歩群では術側最大膝関節伸展筋力が有意に低下した(p<0.01)。補助具群では術部VASが有意に低下した(p<0.05)。その他の項目では有意差を認めなかった。
独歩群では術後約3週間において術部VASの差(術前-術後約3週間)と術側最大膝関節伸展筋力に中等度の相関を認めた(r=0.62)。また,術側最大膝関節伸展筋力と術側FRT(r=0.59),術側片脚立位時間(r=0.69)に中等度の相関を認めた。補助具群では,術後約3週間において術部VASと10m歩行時間に中等度の相関(r=0.68),術部VASとTUGに強い相関を認めた(r=0.84)。
これらより,独歩群では術部疼痛の軽減がバランス機能の改善などADL向上に関連しやすい傾向があるのに対し,補助具群ではADL拡大にあたり術部疼痛の軽減が歩行機能改善へと結びつきにくい傾向がある。
【結論】
人工膝関節置換術後,約3週間で独歩獲得が困難な症例においては,①術前より術部疼痛のため最大筋力の発揮が困難である傾向,または②疼痛の軽減が歩行機能の改善に結びつきにくい傾向があり,急性期リハビリテーションにおいては術前の時点から下肢機能へのアプローチを行うことが術後の歩行機能改善を図る上で重要であることが考えられる。
人工膝関節置換術(以下,TKA)の件数は年々増加している中,急性期をはじめとした術後リハビリテーションを行う中で,術後約3週間時点の歩行機能はクリニカルパス上,退院後の転帰に直結しやすく,歩行機能の改善に要する期間も症例により多様である。そこで,TKA前後における歩行機能とそれに関わる因子について検討した。
【方法】
対象は平成28年6月から9月までの間に当院において片側TKAを施行された13名(男性3名,女性10名,年齢74.9±8.2歳,BMI25.6±2.4,原疾患:変形性膝関節症10例,関節リウマチ3例)とした。術前と術後約3週間の退院前に理学療法評価を行った。評価項目は術側,非術側の最大膝関節伸展筋力と最大股関節外転筋力,Functional Reach Test(以下,FRT)と片脚立位時間,術部Visual Analogue Scale(以下,VAS),10m歩行時間,Timed up and go test(以下,TUG),とした。筋力はHand-Held Dynamometer(アニマ社製μTas F-100)を使用し,トルク長と体重をもとに単位をkgm/kgとした。
対象者を術前,術後約3週間とも独歩可能であった群(以下,独歩群),術前,術後いずれかに歩行補助具を要した群(以下,補助具群)の2群に群分けした。分析は評価項目ごとに術前,術後で対応のあるt検定を行い,有意水準を5%とした。また,各群で術前,術後の項目間でPearsonの相関係数を算出し,関連性について検討した。
【結果】
独歩群は5名,補助具群は8名であり,年齢,BMIにおいて群間での有意差は認めなかった。術前と術後約3週間において,独歩群では術側最大膝関節伸展筋力が有意に低下した(p<0.01)。補助具群では術部VASが有意に低下した(p<0.05)。その他の項目では有意差を認めなかった。
独歩群では術後約3週間において術部VASの差(術前-術後約3週間)と術側最大膝関節伸展筋力に中等度の相関を認めた(r=0.62)。また,術側最大膝関節伸展筋力と術側FRT(r=0.59),術側片脚立位時間(r=0.69)に中等度の相関を認めた。補助具群では,術後約3週間において術部VASと10m歩行時間に中等度の相関(r=0.68),術部VASとTUGに強い相関を認めた(r=0.84)。
これらより,独歩群では術部疼痛の軽減がバランス機能の改善などADL向上に関連しやすい傾向があるのに対し,補助具群ではADL拡大にあたり術部疼痛の軽減が歩行機能改善へと結びつきにくい傾向がある。
【結論】
人工膝関節置換術後,約3週間で独歩獲得が困難な症例においては,①術前より術部疼痛のため最大筋力の発揮が困難である傾向,または②疼痛の軽減が歩行機能の改善に結びつきにくい傾向があり,急性期リハビリテーションにおいては術前の時点から下肢機能へのアプローチを行うことが術後の歩行機能改善を図る上で重要であることが考えられる。