第52回日本理学療法学術大会

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-49] ポスター(運動器)P49

2017年5月14日(日) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-49-4] 軟部肉腫術後の運動機能変化とQuality of Lifeの関連性

原 瑞枝1, 平岡 弘二2, 濱田 哲矢2, 橋田 竜騎1,2, 志波 直人1,2 (1.久留米大学病院リハビリテーション部, 2.久留米大学医学部整形外科学講座)

キーワード:軟部肉腫術後, 手術後運動機能, Quality of Life

【はじめに,目的】

軟部肉腫は人口10万人あたり約2人に発生する希少がんである。その中でも大腿部は軟部肉腫の好発部位であり,広範切除において筋肉合併切除を要することが多い。しかし筋切除部位と運動機能の詳細な検討は十分に行なわれてはいない。本研究では,当院整形外科治療中にがんのリハビリテーションを行なった大腿部発生軟部肉腫術後の,運動療法効果,運動機能変化とQuality of Life(以下,QOL)の関連性について検討することである。







【方法】

平成27年8月より平成28年8月迄の間に当院に入院したquadriceps(Q切除群),もしくはhamstring(H切除群)に発生した軟部肉腫例で,広範切除および化学療法または放射線治療を施行し運動機能を詳細に評価した8例を対象とした。年齢は24歳から83歳(平均54.3歳),男性1例,女性7例,Q切除群4例,H切除群4例であった。評価項目は歩行様式,切除筋数,ロコモスキャン(ALCARE)による下肢筋力,握力,関節可動域(ROM),Functional reach test(FRT最速値),10m歩行(最速値),Timed Up and Go(TUG最速値)の8項目,QOL指標にEQ-5Dを使用し,術後1,3,6か月の時点で各々評価した。ウイルコクソンの符号順位検定を用い,P<0.05を有意とした。




【結果】

術後6か月の歩行様式は1例は一本杖,7例は独歩で自立歩行が可能であった。平均切除筋数はQ切除群では1.0,H切除群で3.2と差を認めた。下肢筋力のロコモスキャンによる測定ではQ切除群では健側と比較し術後1か月で84.1%,術後6か月で78.6%とさらに減弱していた。H切除群においても術後1か月で66.3%,術後6か月で68.9%と低下しており,期間による減弱率の明らかな改善は認めなかった。リハビリテーションによる経時的改善度を検討するとQ切除群においてTUG,10m歩行,EQ-5Dの効用値に改善傾向が認められた。H切除群では術後6か月において握力,TUG,10m歩行,患側ロコモスキャン値,EQ-5D効用値の改善傾向が認められた。またROM制限はH切除群に3例認められ,全例放射線治療施行例であり,患側膝ROM制限とEQ-5D効用値低下に有意な相関を認めた。







【結論】

quadricepsの部分切除では筋力低下は軽度であったが,健側比の筋力低下は経時的に改善しておらず,筋肉欠損の影響が続くと考えられた。ロコモスキャンは主にquadriceps筋力を反映するが,H切除群においてもロコモスキャン値の減弱を認め,このことよりロコモスキャンは下肢筋力全体を反映している可能性が示唆された。今回の評価でH,Q両切除群で改善傾向が見られたのはTUG,10m歩行,EQ-5Dであり,下肢運動機能向上がQOL改善に関与していると思われた。またQOLに影響を及ぼすのはROM制限であり,放射線治療例では早期より関節可動域練習を要すると思われる。本研究により,周術期軟部肉腫患者に対する運動療法は,退院後の運動機能改善とQOLの向上につながると考える。