第52回日本理学療法学術大会

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[P-NV-12] ポスター(神経)P12

2017年5月12日(金) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-12-1] 急性期脳卒中リハビリテーションにおける延髄外側梗塞lateropulsion陽性患者の臨床的特徴

竹中 悠司1, 山本 幸夫1, 島田 幸洋1, 尾谷 寛隆1, 後藤 葉一3, 横田 千晶1,2 (1.国立循環器病研究センター脳血管リハビリテーション科, 2.国立循環器病研究センター脳血管内科, 3.国立循環器病研究センター循環器病リハビリテーション部)

キーワード:急性期脳卒中, 延髄外側症候群, lateropulsion

【はじめに,目的】

延髄外側梗塞は,Horner症候群,眩暈,嚥下障害,温痛覚障害,運動失調,lateropulsion(側方突進)などの延髄外側症候群と呼ばれる特徴的な症候を呈する。なかでもlateropulsionは筋力が保たれているにもかかわらず病巣側に体が不随意に倒れる症候で,立位や歩行などの動作能力の獲得に悪影響を与えるとされている。しかし,これまでに急性期脳卒中リハビリテーションでのlateropulsionに関する報告は極めて少ない。そこで今回,急性期脳卒中リハビリテーションにおけるlateropulsion陽性例の臨床的特徴について調査した。

【方法】

対象は2013年1月から2016年10月に理学療法依頼のあった初発急性期脳梗塞患者のうち,発症前mRS 0-1であり,延髄外側に限局した病巣を認めた26例(平均63.8±11.5歳,男性20例)。lateropulsion有り群(陽性群)と無し群(陰性群)に分類し,年齢,性別,病巣側,発症から初回Functional independence measure(FIM)評価までの日数,リハビリテーション実施日数,リハビリテーション開始後の初回・退院時FIM,退院時の歩行自立度,退院先を両群で比較検討した。FIMは中央値で求め,5%未満を有意差ありとした。

【結果】

Lateropulsion陽性例は15例(57%)であった。発症から初回FIM評価までの日数(中央値)は,陽性群/陰性群6/8.5日,性別(男性)は73/90%,右病変例は60/70%,リハビリテーション実施日数(中央値)は19/16日であり,いずれも両群間に差はなかった。初回FIM総得点は87/121.5,初回運動項目FIMは54/86.5,退院時FIM総得点は115/126,退院時運動項目FIMは81/91,退院時に独歩可能な例は66/100%といずれも陽性群で低かった。退院先は陽性群が自宅7例(47%),回復期病院8例(53%),陰性群が自宅8例(80%),回復期病院2例(20%)であったが両群間に差はなかった。陽性群のうち入院中にlateropulsionが消失した例は7例(47%)で,消失するまでの平均日数は発症後10.3±5日であった。

【結論】

本研究より,初発延髄外側脳梗塞におけるlateropulsionの出現例は15例(57%)であったが,発症後平均10日で7例(47%)が消失した。Lateropulsion陽性群は,陰性群に比べて初回・退院時FIMともに低値であり,退院時の歩行自立度は低く,過半数例で回復期リハビリテーション病院への転院を要した。以上より,lateropulsionは,約半数例で発症後早期に消失するが,本症の後遺は,急性期脳卒中リハビリテーションにおける日常生活活動や移動動作獲得に対する阻害因子となる可能性がある。