第52回日本理学療法学術大会

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[P-NV-16] ポスター(神経)P16

2017年5月12日(金) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-16-2] 麻痺側足関節の同時活動に関わる因子への介入により同時活動と歩行機能が改善した左片麻痺の一症例

西本 和平1, 愛知 諒1, 植田 耕造1,2 (1.星ヶ丘医療センターリハビリテーション部, 2.畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター)

キーワード:同時活動, 足関節底屈筋力, 歩行速度

【はじめに,目的】

脳卒中後の麻痺側足関節周囲筋の同時活動は代償的な姿勢制御とされ,足関節底屈筋力やバランス能力と関係し,歩行速度を低下させる原因と報告されている。

今回,回復期入院中の患者において歩行中の麻痺側足関節周囲筋に同時活動を呈し,遊脚期での引っかかりや歩行速度の低下を認めた患者を担当した。同時活動に着目して評価,介入を行った結果,同時活動が軽減し歩行時の引っかかりや歩行速度の改善を認めたため報告する。

【方法】

症例は60歳代後半の男性であり,右内包後脚梗塞で左下肢SIAS4であった。全歩行周期を通して麻痺側足関節を固定する傾向にあり,遊脚期で足趾の床への引っかかりを認めた。筋電図を用いて歩行時の筋活動を評価した所,麻痺側足関節の同時活動の振幅を表すCoactivation Index(CoI)は立脚0.174,遊脚0.203であった。この同時活動により足関節を固定し足関節底背屈運動が円滑に行えないことが遊脚期の引っかかりや歩行速度の低下(3.31km/h)を誘発していると考えられた。この時の麻痺側足関節MMTは底屈3,背屈4で,筋電図で測定したMVC(mV)は内側腓腹筋(MG)88.1,前脛骨筋(TA)125.9であった。またバランス機能は重心動揺計で測定した開眼開脚静止立位の矩形面積(cm2)は6.0であった。この時期は歩行時に麻痺側TAの持続的な活動を認めたことから,それが同時活動の主な原因と考え,歩行時にTAが活動するタイミングの学習を促す目的で遊脚時の麻痺側TAに電気刺激を実施した。それに加え,足関節底屈筋力強化練習とバランス練習を1週間実施した。

その結果,TAのMVCは166.9,矩形面積は3.60,歩行速度は4.18と改善した。しかしMGのMVCは87.7と著変はなく,CoIの立脚期は0.168,遊脚期も0.174と低下したが大きな変化は認めなかった。また遊脚期の引っかかりも残存した。つまりこの期間はバランス機能やTAのMVCに改善を認めたが足関節底屈筋力とCoIに著変を認めなかった。この結果と足関節底屈筋力とバランス機能が同時活動に関連するという先行研究(Kitatani,2016)の知見を踏まえると,本症例のCoIには麻痺側底屈筋力が主に関係すると考えられたため,次の1週間は片脚での足関節底屈運動を増やし,さらにマット上でのバランス練習も実施した。

【結果】

MVCはTAで138.6,MGで194.3,矩形面積は3.01となった。CoIは立脚期0.137,遊脚期0.134と大きく減少した。歩行時の引っかかりはあまり認めなくなり,歩行速度は4.32と改善を認めた。

【結論】

今回の結果から本症例の同時活動には底屈筋力が関連したためTAへの電気刺激よりも底屈筋力強化が有効であったと考えられる。今回は歩行中の足関節角度などは測定できていないが,同時活動の減少により足関節の固定が軽減し遊脚期の引っかかりが減少したと考えられる。しかしながら,歩行速度の改善と同時活動の改善の時期は異なり,歩行速度の改善には他の因子の改善が関与した可能性が考えらえる。