第52回日本理学療法学術大会

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[P-NV-21] ポスター(神経)P21

2017年5月13日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-21-1] 脳卒中片麻痺者に対する体幹ベルト付下肢装具装着歩行の力学的解析

丹保 信人1,2, 相馬 俊雄2 (1.一般財団法人竹田健康財団竹田綜合病院, 2.新潟医療福祉大学大学院)

キーワード:体幹ベルト付下肢装具, 関節角度, 関節モーメント

【はじめに,目的】

「理学療法診療ガイドライン2011脳卒中」において,体幹ベルト付下肢装具(CVAid)が紹介された。CVAidは,弾性バンドとインソールにより体幹と下肢を連結する点が,他の下肢装具にない特徴である。脳卒中片麻痺者に対するCVAid装着歩行(CVAid歩行)では,装着による即時的なエネルギー効率の改善が報告されているが,その結果におけるCVAidの力学的特性については不明である。これまでに,我々は健常成人に対して,CVAid歩行時の前遊脚期の膝関節伸展モーメント減少や下肢関節角度の変化を明らかにしてきた。今回の目的は,脳卒中片麻痺者に対し,プラスチック製AFO歩行(AFO歩行)とCVAid歩行の2条件の違いを力学的に明らかにすることである。


【方法】

対象は,維持期脳卒中片麻痺者1名(左片麻痺,34歳,男性,身長172cm,体重77kg)とした。罹患期間は,4年1ヵ月であった。左下肢Brunnstrom Recovery stageはIV,左下腿三頭筋Modifiied Ashworth Scaleは1+,Functional Ambulation classificationは4であった。屋外歩行はT-caneとプラスチック製AFOを使用している。

課題条件は,AFO歩行とCVAid歩行の2条件における10mの平地歩行とした。2条件とも同日中に測定し,各条件間には1時間以上の休憩とった。CVAidの体幹ベルトの張力は3kgとした。

使用機器は,CCDカメラ11台を含む3次元動作解析装置(VICON Nexus),床反力計6台,弾性バンドの張力を計測するテンションメータ(Leptrino)を用いた。サンプリング周波数は,3次元動作解析装置が100Hz,床反力計とテンションメータが1kHzであった。被験者に,赤外線反射マーカー(直径15mm)を身体の15箇所に貼付した。

解析区間は,CVAid装着側の左下肢の初期接地から,同側の初期接地までの一歩行周期とした。解析は,2条件の10歩行周期分のデータを加算平均処理した。解析項目は,踵離地前後の下肢関節角度と関節モーメントを算出した。データの比較は,AFO歩行とCVAid歩行の各解析項目から平均値と標準偏差を算出し比較した。

【結果】

(AFO歩行/CVAid歩行)とする。

関節角度の立脚期では,股関節伸展(3.1±1.3/5.1±1.2)(°),膝関節屈曲(31.0±3.7/33.9±1.4),足関節底屈(6.7±0.7/3.1±0.8)であった。遊脚期では股関節屈曲(20.9±1.3/18.7±1.0),足関節背屈(-5.1±0.7/-1.8±0.7)であった。

立脚後期の関節モーメントでは,股関節屈曲(17.1±3.6/17.7±2.3)(Nm),膝関節伸展(2.4±1.5/3.1±0.9),足関節底屈(32.9±4.4/41.9±4.1)であった。



【結論】

CVAid歩行の関節角度では,身体重心の前方移動に関与する立脚後期の股関節伸展角度,遊脚中の床とのクリアランスに関与する遊脚初期の足関節背屈角度に増大が見られた。CVAid歩行の関節モーメントでは,下肢の前方推進に関与する立脚後期の足関節底屈モーメントの増大が見られた。

CVAidは,身体重心の前方移動やCVAid装着側下肢の前方推進を補助する可能性がある。