第52回日本理学療法学術大会

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[P-NV-21] ポスター(神経)P21

2017年5月13日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-21-4] 意識障害を呈した脳卒中患者における集中治療管理中の座位・立位・歩行練習の検討

守屋 正道1, 金指 佳希2 (1.日本大学医学部附属板橋病院リハビリテーション科, 2.帝京平成大学健康メディカル学部理学療法学科)

キーワード:脳卒中治療ガイドライン, AVERT Trial, 意識障害

【はじめに,目的】

脳卒中リハビリテーションは,脳卒中治療ガイドライン2015において可及的早期に開始することが勧められており,座位・立位練習はJapan Coma Scale(JCS)が1桁であることが条件として記されている。しかし最近では,細胞レベルでの理学療法(PT)の効果が示されており,病態管理が安定していれば意識障害があっても早期より離床を開始することが望ましいと考えられる。今回,意識障害を呈した症例に対し,座位・立位・歩行練習をJCS1桁で開始した群と2桁以上で開始した群とで,基本情報や経過・結果について比較した。意識障害を呈した症例へのPTの有効性を検討したので報告する。

【方法】

対象は2016年2月から2016年9月までに当院救命救急センターへ脳卒中と診断され入室し,集中治療管理を行った症例とした。その中で,PTを実施し意識障害を呈していた38例を調査した。除外基準は,脳卒中以外の重篤な重複疾患を有する症例,離床を進めることができない合併症を認めた症例,入院前から歩行不可能であった症例,死亡症例とした。離床開始時のJCSが1桁の症例を従来群(18例),2桁以上の症例を重症群(20例)に分類し,診療録より抽出した項目について2標本t検定あるいはχ2検定を用いて比較した。

【結果】

平均年齢は(従来/重症)74.8/66.9歳,性別は男性12/14例・女性6/6例,病型は脳出血8/11例・脳梗塞9/5例・くも膜下出血1/4例,手術を施行した症例は1/11例,離床を展開した症例は18/18例,歩行に至った症例は15/7例であった。発症から手術までの日数は2/1.5日,PT開始までの日数は3.2/5.0日,離床までの日数は3.2/8.4日,歩行までの日数は8.2/13.1日,ICU在室期間は7.0/15.7日,在院日数は21.5/27.9日であった。初期NIHSSは11.8/24.5,最終NIHSSは5.7/14.9,NIHSSの改善効率(NIHSS初期-最終/在院日数)は0.28/0.34,有害事象(脳卒中の進行や再発)の発生は0/0例,微細な有害事象(血圧およびICP高値)は0/6例であった。最終のJCSは1桁が34例・2桁以上が4例であった。2群間において年齢(p=0.04),理学療法開始までの日数(p=0.04),離床までの日数(p=0.01),ICU在室期間(p=0.01),NIHSS初期(p=0.01),NIHSS最終(p=0.01)に統計学的有意差を認めた。

【結論】

The AVERT Trial Collaboration groupによる研究では,no response to voiceが離床除外基準として記されており,本邦のガイドラインでは離床を制限する症例に対しても積極的に進めていると考えられる。本研究ではJCS2桁以上の症例に対し,有害事象を認めず90%の症例が離床を展開し,35%の症例が歩行に至った。JCS1桁の症例に比して,PT開始までの日数や離床までの日数が遅延することが確認されたが,NIHSS改善効率は高値であり有効性が示唆された。しかし離床に対するコンセンサスが不十分であるため,微細な有害事象を含めた本研究結果を参考に離床基準および中止基準の見直しが必要である。