第52回日本理学療法学術大会

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[P-NV-25] ポスター(神経)P25

2017年5月14日(日) 11:40 〜 12:40 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本神経理学療法学会

[P-NV-25-5] 体性感覚フィードバックを伴った筋感覚的運動イメージにより随意性に改善を認めた一症例

伊藤 大剛1, 柏田 夏子1, 今西 麻帆1, 石原 匠1, 西川 咲1, 市村 幸盛1, 富永 孝紀2 (1.医療法人穂翔会村田病院リハビリテーション部, 2.株式会社たか翔)

キーワード:運動イメージ, 体性感覚, 随意性

【はじめに,目的】

運動イメージは皮質脊髄路の興奮性増大に関与するとされており(Fourkas 2006),運動機能回復に対する介入として多く用いられている。今回,既往の整形外科疾患により自律的な歩行獲得が困難となり,下肢の随意性向上が必要であった左片麻痺症例に対し,体性感覚フィードバック(FB)を伴った筋感覚的運動イメージ(kinesthetic motor imagery:KI)を用いて介入した結果,随意性・歩行機能に改善を認めたため報告する。

【方法】

症例は右放線冠~基底核梗塞により左片麻痺を呈した80歳代男性であった。発症2ヶ月後の下肢BRSはIII-1,感覚は軽度鈍麻,歩行は四点杖にて軽介助レベルであった。既往の右膝関節骨折により右膝関節は屈曲40度で拘縮を認め,自律的な歩行獲得が困難であり,左下肢の随意性向上が歩行獲得に重要と考えられた。高次脳機能障害として注意障害,失語症,失行症を認めていた。股関節屈曲時には,適切な関節や筋に対し選択的注意を誘導した場合でも「どこに力を入れていいか分からない」といった内省が得られた。その要因として,近位部優位の運動麻痺やそれに伴う運動経験が減少したことで股関節に対する運動イメージが困難となっていることが考えられた。そのため,難易度を考慮しながら段階的に運動イメージを補完していくことで随意性向上につながると仮説立てた。そこで,身体内外部に対する選択的注意や様々な感覚モダリティを用いて評価した結果,圧覚FBを伴わせたKIで最も即時的効果が得られた。そのため,筋出力の変化に応じて圧覚FBを与えることが可能なスポンジを用いてKIを補完しながら股関節屈曲課題を2週間実施した。介入前後の評価としてFugl-Meyer Assessment(FMA)の下肢運動項目,背臥位での股関節屈曲角度(自動運動),10m歩行における歩行速度,ストライド長,ケイデンスを用いた。

【結果】

FMAは14点から21点,股関節屈曲角度は70°から110°となった。10m歩行は3分48秒,105歩から2分49秒,93歩となり,歩行速度は2.62m/分から3.54m/分に,ストライド長は19cmから21cmに,ケイデンスは27.63歩/分から33.02歩/分へとなった。

【結論】

介入前後においてFMA,股関節屈曲角度の改善を認めた。体性感覚FBを用いて,難易度を考慮しながらKIを補完したことで,自発的にKIの想起が可能となり運動機能回復につながったと考えた。また,10m歩行においてストライド長,ケイデンス双方で改善を認めた。歩行における股関節屈曲筋群は主に歩行率の向上に貢献する(Neptune, et al., 2008)とされているため,股関節屈曲角度の増大がストライド長だけでなく,ケイデンスの改善においても寄与していることが考えられた。