[P-RS-02-5] 原発性肺癌肺切除術後の退院時6分間歩行距離が400mを下回る症例の特徴
Keywords:原発性肺癌, 肺切除術, 運動耐容能
【はじめに,目的】
肺癌肺切除術後では運動耐容能が低下することが報告されている。癌患者において術後の運動耐容能を維持することはPerformance Status(PS)の維持に繋がり,術後の治療選択やQOLの維持に非常に重要な意味を持つ。運動耐容能の指標として,6分間歩行距離(6MWD)400mは屋外歩行自立可否の目安として実臨床で用いられているが,肺癌肺切除患者においても術後6MWDが400m以下の症例は退院後の活動性低下からPS低下の危険性が高いと考えられるため,運動耐容能が6MWDで400m以下に低下しないようにすることは重要である。そこで今回の研究の目的は肺癌肺切除術後患者の術後6MWDが400mを下回る症例の特徴を明らかとすることとした。
【方法】
対象は当院にて2015年1月~12月に原発性肺癌の診断にて肺切除術を施行した136名のうち,術前6分間歩行距離(6MWD)が400m以上であった90名とした。術後運動耐容能に影響する因子を,術前因子(年齢,BMI,性別,喫煙指数,術前6MWD,術前6MWT最低SpO2,DMの有無,術前Alb値,術前%VC,術前EFV1%,術前DLCO,術前PCF),手術因子(術式,手術時間,術中出血量,組織型,癌のstage),術後経過因子(術後最大CRP,術後Afの有無,術後3日目NRS)に分類し診療記録より後方視的に調査した。さらに退院時6MWDが400m以下であった群(A群)と400m以上であった群(B群)の2群に分類し比較した。統計には各評価項目の両群間の比較に対応のないt検定およびカイ二乗検定を用い,得られた結果にROC解析を行いカットオフ値を算出した。統計学的有意基準は5%未満とした。
【結果】
両群間の割合はA群32名(36%),B群58名(64%)であり,年齢,BMI,性別は両群間で有意差を認めなかった。各項目の2群間の比較では,術前6MWD(A群:470.8±49.5m,B群:523.5±56.7m,p<0.01),術前%VC(A群:98.6±14.6%,B群:105.8±12.2%,p<0.01),術前PCF(A群:308±70.1L/min,B群:354.8±104.6L/min,p=0.02)がA群と比較してB群で有意に高値であった。一方,その他の項目については,両群間で有意差を認めなかった。%VCのカットオフ値は104.0%(感度72.3%,特異度87.0%)であった。
【結論】
本研究の結果から,術前6MWD,術前%VC,術前PCFが低下している症例では,術後6MWDが400m以下に低下しやすく,退院後屋外歩行が困難となり活動性が低下する危険性が高まることが明らかとなった。%VCのカットオフ値は104.0%であり,感度と特異度が他の指標よりも高かった。そのため,特に肺活量が正常域でも低肺活量の症例では術後の運動耐容能低下およびPSの低下に注意する必要がある。
肺癌肺切除術後では運動耐容能が低下することが報告されている。癌患者において術後の運動耐容能を維持することはPerformance Status(PS)の維持に繋がり,術後の治療選択やQOLの維持に非常に重要な意味を持つ。運動耐容能の指標として,6分間歩行距離(6MWD)400mは屋外歩行自立可否の目安として実臨床で用いられているが,肺癌肺切除患者においても術後6MWDが400m以下の症例は退院後の活動性低下からPS低下の危険性が高いと考えられるため,運動耐容能が6MWDで400m以下に低下しないようにすることは重要である。そこで今回の研究の目的は肺癌肺切除術後患者の術後6MWDが400mを下回る症例の特徴を明らかとすることとした。
【方法】
対象は当院にて2015年1月~12月に原発性肺癌の診断にて肺切除術を施行した136名のうち,術前6分間歩行距離(6MWD)が400m以上であった90名とした。術後運動耐容能に影響する因子を,術前因子(年齢,BMI,性別,喫煙指数,術前6MWD,術前6MWT最低SpO2,DMの有無,術前Alb値,術前%VC,術前EFV1%,術前DLCO,術前PCF),手術因子(術式,手術時間,術中出血量,組織型,癌のstage),術後経過因子(術後最大CRP,術後Afの有無,術後3日目NRS)に分類し診療記録より後方視的に調査した。さらに退院時6MWDが400m以下であった群(A群)と400m以上であった群(B群)の2群に分類し比較した。統計には各評価項目の両群間の比較に対応のないt検定およびカイ二乗検定を用い,得られた結果にROC解析を行いカットオフ値を算出した。統計学的有意基準は5%未満とした。
【結果】
両群間の割合はA群32名(36%),B群58名(64%)であり,年齢,BMI,性別は両群間で有意差を認めなかった。各項目の2群間の比較では,術前6MWD(A群:470.8±49.5m,B群:523.5±56.7m,p<0.01),術前%VC(A群:98.6±14.6%,B群:105.8±12.2%,p<0.01),術前PCF(A群:308±70.1L/min,B群:354.8±104.6L/min,p=0.02)がA群と比較してB群で有意に高値であった。一方,その他の項目については,両群間で有意差を認めなかった。%VCのカットオフ値は104.0%(感度72.3%,特異度87.0%)であった。
【結論】
本研究の結果から,術前6MWD,術前%VC,術前PCFが低下している症例では,術後6MWDが400m以下に低下しやすく,退院後屋外歩行が困難となり活動性が低下する危険性が高まることが明らかとなった。%VCのカットオフ値は104.0%であり,感度と特異度が他の指標よりも高かった。そのため,特に肺活量が正常域でも低肺活量の症例では術後の運動耐容能低下およびPSの低下に注意する必要がある。