第52回日本理学療法学術大会

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[P-SP-08] ポスター(スポーツ)P08

2017年5月13日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本スポーツ理学療法学会

[P-SP-08-1] 2次元画像を用いた投球動作における“膝割れ”の定量的評価

森下 聖1, 境 隆弘2, 来田 晃幸3, 今高 康詞4, 小柳 磨毅5 (1.武部整形外科リハビリテーション, 2.大阪保健医療大学, 3.関西メディカルリハ倶楽部, 4.行岡病院, 5.大阪電気通信大学)

キーワード:投球動作, 膝割れ, 2次元画像評価

【はじめに,目的】

投球動作のステップ脚が接地から動作終了までに膝が外側に向く“膝割れ”は,骨盤,体幹の回旋異常を伴い,投球障害の一因とされる。そのため,投球フォームの指導が行われるが,その効果を簡便に判定する評価方法は確立されていない。そこで,デジタルカメラと体表指標による前額面の2次元画像(2D)を用いた“膝割れ”の定量的な評価方法を考案し,動作分析に広く使用される3次元動作解析(3D)装置との比較により,2D評価の有用性を検討した。


【方法】

対象は,健常野球経験者25例(年齢22.3±2.1歳,身長172.5±6.2cm,体重68.9±11.0kg,野球歴16.4±3.4年)とした。投球動作は前方からデジタルカメラ(CASIO社製EX-F1,ハイスピードモード300Hz)で撮影し,同時に3D装置(OMG社製VICON MX,サンプリング周波数300Hz)を用いて解析した。分析位相はfoot plant(FP),最大外旋(MER),ball release(BR)とした。動作解析ソフト(東総システム社製ToMoCo-LiteおよびOMG社製VICON NEXUS)を用いて,投球動作中のステップ脚の上前腸骨棘と膝蓋骨上縁を結ぶ中点(A)と膝蓋骨上縁(P)を結んだ線および脛骨粗面(T)と内外果間の中点(M)を結んだ線とのなす角(AP-TM角)を2D,3Dとも計測した。そして,plug-in-gaitマーカーモデルを使用して,ステップ脚の股・膝・足関節の各角度を算出した(3D計測値)。2DのAP-TM角の①信頼性の検討には,級内相関係数(ICC)を求めた。また,②妥当性の検討には,AP-TM角の3Dに対する2Dの計測誤差を算出し,2DのAP-TM角と3D各計測値間の相関係数(r)も検討した(p<0.05)。


【結果】

①信頼性 ICC(検者内,検者間):FP(0.97,0.97),MER(0.99,0.98),BR(0.99,0.97)

②妥当性 計測誤差:FP 2.1±1.4°,MER 1.5±1.3°,BR 2.1±1.8°

相関:FP(股関節内外転r=0.14,膝関節内外反r=-0.24,足関節回内外r=0.05)

MER(股関節内外転r=0.83,膝関節内外反r=0.93,足関節回内外r=0.92)(p<0.01)

BR(股関節内外転r=0.94,膝関節内外反r=0.98,足関節回内外r=0.97)(p<0.01)


【結論】

各位相の2Dで計測したAP-TM角は信頼性が高く,基準とした3D計測値の誤差(±0.15°)を含めても十分な精度を有しており,本法の臨床評価としての妥当性が示唆された。また,MERとBRにおける2DのAP-TM角と3Dの股・足関節角度との強い相関関係から,膝関節内外反の角度計測である本法は,前額面上での股関節や足関節の運動を反映した指標であり,これらの隣接する関節からのアプローチにも示唆を与えると考えられた。

2D評価の臨床的意義は,“膝割れ”を呈する症例に対するフォーム指導の客観的,即時的な効果判定が可能であり,視覚的フィードバックとしても利用できることにある。