[P-SP-10-5] 体操競技選手の身体特性と手関節痛
―前腕,上肢帯機能に着目して―
キーワード:体操競技選手, 手関節痛, 身体特性
【はじめに,目的】
男子体操競技の障害特徴は,手関節の障害が多い。荷重・懸垂動作は手関節に加え,前腕・肩甲胸郭関節・上肢帯回旋の機能などが大切と報告されている。しかし,手関節痛を有する体操競技選手の前腕・上肢帯機能に着目した報告が少ない。本研究目的は,手関節痛を有する体操競技選手の前腕機能と上肢帯機能の関連性を検討することである。
【方法】
対象は男子高校体操競技選手(両手関節痛群:以下P群:7名,手関節痛既往無し群:以下N群:9名)で運動機能評価(ROM,握力)とアンケート調査を行った。ROMは自動運動にて手関節(掌屈・背屈・上肢下垂位背屈・立位棒把持にて背屈・ベッド上背臥位膝90°屈曲位,上肢最大拳上位で背屈),前腕(棒把持にて回内・回外),上肢帯(ベッド上背臥位膝90°屈曲位,上肢最大拳上位棒把持にて外旋・内旋),握力計測後に上肢帯の荷重・懸垂動作を考慮し,握力/体重比を算出した。また,アンケート調査として上肢帯罹患歴,年間試合数を調査した。統計学的処理は対応のないT検定,Mann-WhitneyのU検定を行い,有意水準は5%である。
【結果】
ROM(P群/N群)は手関節(掌屈58.2°/64.1°,背屈53.2°/54.7°,下垂位背屈50.0°/54.4°,棒把持背屈61.4°/61.9°,背臥位上肢最大拳上位背屈54.6°/58.6°),前腕(回内44.6°/53.9°,回外123.2°/120.3°),上肢帯(外旋36.4°/48.1°,内旋139.6°/137.2°)であった。握力/体重比は0.75/0.64であった。P群はN群より上肢帯外旋が低値,握力/体重比が高値を示し有意差を認めた。アンケートは上肢帯既往歴部位数2.7/0.5,現在の手関節以外の上肢帯疼痛部位数0.6/0.0,年間試合数5.6/4.6であった。アンケートではP群が既往歴部位数,現在の手関節以外の上肢帯疼痛部位数,年間試合数で高値を示し有意差を認めた。
【結論】
本研究結果よりP群が身体機能面では上肢帯外旋が低値,アンケートでは既往歴部位数,現在の手関節以外の上肢帯疼痛部位数が多かったため,両手関節痛を有する体操競技選手へのアプローチは手関節への局所アプローチに加え,上肢帯全体を考慮したアプローチが重要と考える。また,年間試合数はP群が多いことから,手関節へのメカニカルストレスがより多く加わって痛みを助長する因子の一つとなっていることが推察される。体操競技の技術特性は荷重や懸垂など上肢機能の体重制御にあると報告されており,握力は上肢機能の重要な指標の一つである。しかし,N群において握力/体重比は低値を示したため,握力は手関節痛を有する体操競技選手においては,必ずしも機能向上を必要とはせず,各症例においてアプローチする必要性があると考える。
男子体操競技の障害特徴は,手関節の障害が多い。荷重・懸垂動作は手関節に加え,前腕・肩甲胸郭関節・上肢帯回旋の機能などが大切と報告されている。しかし,手関節痛を有する体操競技選手の前腕・上肢帯機能に着目した報告が少ない。本研究目的は,手関節痛を有する体操競技選手の前腕機能と上肢帯機能の関連性を検討することである。
【方法】
対象は男子高校体操競技選手(両手関節痛群:以下P群:7名,手関節痛既往無し群:以下N群:9名)で運動機能評価(ROM,握力)とアンケート調査を行った。ROMは自動運動にて手関節(掌屈・背屈・上肢下垂位背屈・立位棒把持にて背屈・ベッド上背臥位膝90°屈曲位,上肢最大拳上位で背屈),前腕(棒把持にて回内・回外),上肢帯(ベッド上背臥位膝90°屈曲位,上肢最大拳上位棒把持にて外旋・内旋),握力計測後に上肢帯の荷重・懸垂動作を考慮し,握力/体重比を算出した。また,アンケート調査として上肢帯罹患歴,年間試合数を調査した。統計学的処理は対応のないT検定,Mann-WhitneyのU検定を行い,有意水準は5%である。
【結果】
ROM(P群/N群)は手関節(掌屈58.2°/64.1°,背屈53.2°/54.7°,下垂位背屈50.0°/54.4°,棒把持背屈61.4°/61.9°,背臥位上肢最大拳上位背屈54.6°/58.6°),前腕(回内44.6°/53.9°,回外123.2°/120.3°),上肢帯(外旋36.4°/48.1°,内旋139.6°/137.2°)であった。握力/体重比は0.75/0.64であった。P群はN群より上肢帯外旋が低値,握力/体重比が高値を示し有意差を認めた。アンケートは上肢帯既往歴部位数2.7/0.5,現在の手関節以外の上肢帯疼痛部位数0.6/0.0,年間試合数5.6/4.6であった。アンケートではP群が既往歴部位数,現在の手関節以外の上肢帯疼痛部位数,年間試合数で高値を示し有意差を認めた。
【結論】
本研究結果よりP群が身体機能面では上肢帯外旋が低値,アンケートでは既往歴部位数,現在の手関節以外の上肢帯疼痛部位数が多かったため,両手関節痛を有する体操競技選手へのアプローチは手関節への局所アプローチに加え,上肢帯全体を考慮したアプローチが重要と考える。また,年間試合数はP群が多いことから,手関節へのメカニカルストレスがより多く加わって痛みを助長する因子の一つとなっていることが推察される。体操競技の技術特性は荷重や懸垂など上肢機能の体重制御にあると報告されており,握力は上肢機能の重要な指標の一つである。しかし,N群において握力/体重比は低値を示したため,握力は手関節痛を有する体操競技選手においては,必ずしも機能向上を必要とはせず,各症例においてアプローチする必要性があると考える。