[P-YB-19-2] 血液内科・リウマチ膠原病内科病棟における理学療法士による予防的介入の適応
ADL維持向上等体制加算算定前の準備期間における検討
Keywords:ADL維持向上等体制加算, 予防, 疾患別リハビリテーション
【はじめに,目的】
当院では平成28年度からADL維持向上等体制加算の導入を目指し,血液内科・リウマチ膠原病内科病棟に専従PTを1名配置し,準備期間として入院・退院時ADL評価,多職種カンファレンスへの参加を開始した。専従PT配置後には疾患別リハ実施割合の増加やリハ開始時期の早期化を認め,リハを必要とする症例に対して確実に早期から実施するという点においては良好な効果を示している。しかし,リハ専門職のマンパワーに限りがある中でADL維持向上等体制加算を有効活用するためには,疾患別リハを行わない予防的介入にも重点をおく必要がある。そこで,本研究の目的は,専従PT配置後の疾患別リハの有無によるADL変化と各々の症例・疾患特性を調査することで,予防的介入の適応を判断する基準を明らかにすることとした。
【方法】
平成28年6月から8月に当院の血液内科・リウマチ膠原病内科病棟(54床)に入院し退院した症例のなかで,死亡退院の6例,入院時ADLがBarthel Index(BI)100点の30例,入院後5日以内に転棟した5例を除外した62例を対象とした。入院中に疾患別リハを施行した37例をリハ群,疾患別リハを施行しなかった25例を予防群とした。年齢,入院時BI,退院時BI,疾患名,ADL低下の要因とその症状の経過を診療録から後方視的に調査した。症状の経過は,入院前に2週間以上継続した症状を認めた場合を慢性,2週間未満の症状の場合を急性とした。解析は,2群の入院時と退院時のBI変化について2元配置分散分析を行った。疾患別リハの有無の関連因子の検討として,疾患別リハの有無を従属変数,年齢,入院時BI,疾患名,ADL低下の要因,症状の経過を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った。入院時BIについてはROC曲線を用い,予防群を判定するカットオフ値を求めた。統計解析には,IBM SPSS ver.22を使用し有意水準は5%とした。
【結果】
疾患名(リハ群/予防群)は,新生物16例/11例,筋骨格系11例/10例,その他10例/4例,入院時BIは50点/70点,退院時BIは100点/100点,症状の経過は,急性22例/23例,慢性15例/2例であった。疾患別リハの有無とBIの評価時期による交互作用は認めず,各要因においてのみ有意差を認めた。予防群の判定には,入院時BIが高いことと,慢性症状がないことが関連しており(モデルχ2値p<0.05,判別的中率72.6%),入院時BIのカットオフ値は65点と示された(p<0.05,感度0.6,特異度0.3,曲線下面積0.7)。
【結論】
血液内科やリウマチ膠原病内科の症例を中心とする病棟においては,年齢,疾患名,ADL低下の要因に関わらず,入院時BIが65点以上であり慢性症状によるADL低下を有さない症例は,PTによる予防的介入の適応となることが示唆された。これらを基準の1つとして疾患別リハの必要性を検討していくことで,マンパワーに限りがある中でADL低下を予防していくことが可能と考える。
当院では平成28年度からADL維持向上等体制加算の導入を目指し,血液内科・リウマチ膠原病内科病棟に専従PTを1名配置し,準備期間として入院・退院時ADL評価,多職種カンファレンスへの参加を開始した。専従PT配置後には疾患別リハ実施割合の増加やリハ開始時期の早期化を認め,リハを必要とする症例に対して確実に早期から実施するという点においては良好な効果を示している。しかし,リハ専門職のマンパワーに限りがある中でADL維持向上等体制加算を有効活用するためには,疾患別リハを行わない予防的介入にも重点をおく必要がある。そこで,本研究の目的は,専従PT配置後の疾患別リハの有無によるADL変化と各々の症例・疾患特性を調査することで,予防的介入の適応を判断する基準を明らかにすることとした。
【方法】
平成28年6月から8月に当院の血液内科・リウマチ膠原病内科病棟(54床)に入院し退院した症例のなかで,死亡退院の6例,入院時ADLがBarthel Index(BI)100点の30例,入院後5日以内に転棟した5例を除外した62例を対象とした。入院中に疾患別リハを施行した37例をリハ群,疾患別リハを施行しなかった25例を予防群とした。年齢,入院時BI,退院時BI,疾患名,ADL低下の要因とその症状の経過を診療録から後方視的に調査した。症状の経過は,入院前に2週間以上継続した症状を認めた場合を慢性,2週間未満の症状の場合を急性とした。解析は,2群の入院時と退院時のBI変化について2元配置分散分析を行った。疾患別リハの有無の関連因子の検討として,疾患別リハの有無を従属変数,年齢,入院時BI,疾患名,ADL低下の要因,症状の経過を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った。入院時BIについてはROC曲線を用い,予防群を判定するカットオフ値を求めた。統計解析には,IBM SPSS ver.22を使用し有意水準は5%とした。
【結果】
疾患名(リハ群/予防群)は,新生物16例/11例,筋骨格系11例/10例,その他10例/4例,入院時BIは50点/70点,退院時BIは100点/100点,症状の経過は,急性22例/23例,慢性15例/2例であった。疾患別リハの有無とBIの評価時期による交互作用は認めず,各要因においてのみ有意差を認めた。予防群の判定には,入院時BIが高いことと,慢性症状がないことが関連しており(モデルχ2値p<0.05,判別的中率72.6%),入院時BIのカットオフ値は65点と示された(p<0.05,感度0.6,特異度0.3,曲線下面積0.7)。
【結論】
血液内科やリウマチ膠原病内科の症例を中心とする病棟においては,年齢,疾患名,ADL低下の要因に関わらず,入院時BIが65点以上であり慢性症状によるADL低下を有さない症例は,PTによる予防的介入の適応となることが示唆された。これらを基準の1つとして疾患別リハの必要性を検討していくことで,マンパワーに限りがある中でADL低下を予防していくことが可能と考える。