第52回日本理学療法学術大会

講演情報

日本予防理学療法学会 » ポスター発表

[P-YB-22] ポスター(予防)P22

2017年5月14日(日) 11:40 〜 12:40 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-22-4] 地域在住中高齢者における生活空間と身体的・心理的因子との関連についての共分散構造分析

池添 冬芽1,5, 井上 和郁子2,5, 正木 光裕3,5, 神谷 碧1,5, 磯野 凌1,5, 加藤 丈博1,5, 山縣 桃子1,5, 佐伯 純弥1,5, 田中 真砂世1,5, 田原 康玄4,5, 松田 文彦4,5, 坪山 直生1,5, 市橋 則明1,5 (1.京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻, 2.アルケア株式会社, 3.新潟医療福祉大学運動機能医科学研究所, 4.京都大学大学院医学研究科附属ゲノム医学センター, 5.ながはま0次コホート研究グループ)

キーワード:生活空間, 身体的・心理的因子, 共分散構造分析

【はじめに,目的】

高齢者の生活空間には,さまざまな身体的因子・心理的因子が複雑に影響を及ぼし,またこれらの要因間にも相互に関連性がみられると考えられる。また,身体的・心理的因子には性差が存在するにも関わらず,これらが生活空間に与える影響について男女別に検討した報告は少ない。そこで,本研究では地域在住中高齢者の生活空間に直接的・間接的に影響を及ぼす因子を明らかにすることを目的として,身体的因子および心理的因子を詳細に評価し,共分散構造分析を用いて影響因子間の関連を考慮したうえで男女別に生活空間に影響を及ぼす因子について検討した。

【方法】

対象は60歳以上の滋賀県長浜市在住中高齢者736名(男性236名,女性500名,年齢68.2±5.1歳)とした。なお,重度の神経学的・整形外科的障害や認知障害を有する者は対象から除外した。

生活空間の評価にはLife-Space-Assessment(LSA)を用い,過去1ヵ月間の活動範囲,活動頻度および自立度から評価した。

身体的因子として,移動動作能力(通常・最大歩行速度,二重課題歩行速度,段差昇降テスト,立ち座りテスト),下肢筋力(膝伸展,股伸展・屈曲・外転,足趾屈曲筋力),バランス能力(安静立位時重心動揺,片脚立位保持時間,TUG),疼痛,心肺機能(心機能,呼吸機能)について評価した。心理的因子として,健康関連QOL(SF-8),主観的健康観,抑うつ,転倒恐怖感について評価した。

生活空間に対する身体的および心理的因子の影響および要因間の関連を検討するために,男女別に仮説モデルを作成し,共分散構造分析を行った。なお,モデルには「心理的因子」および身体的因子として「移動動作能力」「下肢筋力」「バランス能力」「痛み」「心肺機能」という構成概念を用いた。

【結果】

共分散構造分析の結果,女性においては移動動作能力および心理的因子が直接的に生活空間に影響を及ぼすことが示された。さらに,移動動作能力は心理的因子に影響を及ぼし,生活空間に対する間接的な影響も持つことが示された。一方,男性においては生活空間に直接影響を及ぼす因子は心理的因子であり,移動動作能力は生活空間に対して直接的な影響を及ぼさないことが示された。また,男女のモデルに共通して,移動動作能力は筋力およびバランス能力から影響を受け,これらは間接的に生活空間に影響を及ぼしていた。一方,男女ともに心肺機能は生活空間に対して影響を及ぼさないことが示された。生活空間に対する影響の強さを示す標準化総合効果を求めた結果,男性では心理的因子,女性では移動動作能力が最も大きい値を示した。

【結論】

地域在住中高齢者を対象に生活空間に影響を及ぼす因子について共分散構造分析を用いて検討した結果,男性では身体的因子よりも心理的因子の影響が大きく,一方,女性においては心理的因子よりも身体的因子,特に移動動作能力の影響が大きいことが示唆された。