[P-YB-23-4] 健常成人に対する二つの3軸加速度計を用いた二重課題下の歩行特性の検討
キーワード:三軸加速度計, 二重課題, 歩行評価
【はじめに,目的】
高齢者や脳損傷患者に対して減算課題などの二重課題を課した歩行では,運動に必要な情報処理能力が制限され,バランスや歩容に支障をきたすことがいわれている。近年,小型加速度計を用いて二重課題下における歩行特性を評価する研究が行われている。それらは小型加速度計を第3腰椎部に装着した研究がほとんどであるが,上部体幹と骨盤の2か所に着目して歩行特性をみた研究は少ない。そこで,本研究では減算課題を課した二重課題下で上部体幹と骨盤の2か所の動きに着目し,歩行特性の変化を検討することを目的とした。
【方法】
対象者は健常成人10名(男性5名,女性5名,平均年齢28.2±4.0歳)であった。3軸加速度計(8チャンネル小型無線モーションレコーダーMVP-RF8-HC-500;マイクロストーン社製)を,第6胸椎部と仙骨部の2か所に装着した。対象者は前後3mの助走路と減速路を設けた10mの直進路を快適速度で歩行し,single task(快適歩行)とdual task(減算課題を課した歩行)の2種類をそれぞれ2回測定した。3軸加速度計から一歩行周期あたりの平均左右幅,上下幅,前後幅,水平面軌跡長,前額面軌跡長,矢状面軌跡長,歩行周期時間,および歩行速度,歩行周期変動係数(CV),Root mean square(RMS)を算出した。解析には専用のソフトウエア(体幹2点歩行動揺計MVP-WS2-S;マイクロストーン社製)を使用した。統計はsingle taskとdual taskの算出結果を対応のあるt検定を用いて分析した。
【結果】
10m快適歩行速度はsingle taskで1.4±1.0m/s,dual taskで1.5±1.1m/sとなり,有意差がみられなかった。第6胸椎部の左右幅はsingle taskで31.6±8.0mm,dual taskで26.9±8.5mm,水平面軌跡長はsingle taskで86.9±12.0mm,dual taskで75.5±17.9mmと,いずれも有意に低下した(p<0.05)。仙骨部においてはどの測定値も有意差がみられなかった。歩行周期時間,CV,RMSも有意な差がみられなかった。
【結論】
本研究では二重課題によって,第6胸椎部では左右幅および水平面軌跡長の有意な低下がみられたが,仙骨部の移動量には変化がみられなかった。このことから,健常者において二重課題を与えると骨盤の動きに変化はみられないが,上部体幹の動きは抑制して歩行していることが考えられた。よって,骨盤と上部体幹が異なる変化をする可能性があることから,骨盤と胸椎部の両方の評価の重要性が示唆された。転倒リスクのある高齢者では二重課題を与えるとバランスや歩容に支障をきたすことから,小型加速度計を用いて2か所で計測することで,より詳細な歩行評価が可能になると考えられた。
高齢者や脳損傷患者に対して減算課題などの二重課題を課した歩行では,運動に必要な情報処理能力が制限され,バランスや歩容に支障をきたすことがいわれている。近年,小型加速度計を用いて二重課題下における歩行特性を評価する研究が行われている。それらは小型加速度計を第3腰椎部に装着した研究がほとんどであるが,上部体幹と骨盤の2か所に着目して歩行特性をみた研究は少ない。そこで,本研究では減算課題を課した二重課題下で上部体幹と骨盤の2か所の動きに着目し,歩行特性の変化を検討することを目的とした。
【方法】
対象者は健常成人10名(男性5名,女性5名,平均年齢28.2±4.0歳)であった。3軸加速度計(8チャンネル小型無線モーションレコーダーMVP-RF8-HC-500;マイクロストーン社製)を,第6胸椎部と仙骨部の2か所に装着した。対象者は前後3mの助走路と減速路を設けた10mの直進路を快適速度で歩行し,single task(快適歩行)とdual task(減算課題を課した歩行)の2種類をそれぞれ2回測定した。3軸加速度計から一歩行周期あたりの平均左右幅,上下幅,前後幅,水平面軌跡長,前額面軌跡長,矢状面軌跡長,歩行周期時間,および歩行速度,歩行周期変動係数(CV),Root mean square(RMS)を算出した。解析には専用のソフトウエア(体幹2点歩行動揺計MVP-WS2-S;マイクロストーン社製)を使用した。統計はsingle taskとdual taskの算出結果を対応のあるt検定を用いて分析した。
【結果】
10m快適歩行速度はsingle taskで1.4±1.0m/s,dual taskで1.5±1.1m/sとなり,有意差がみられなかった。第6胸椎部の左右幅はsingle taskで31.6±8.0mm,dual taskで26.9±8.5mm,水平面軌跡長はsingle taskで86.9±12.0mm,dual taskで75.5±17.9mmと,いずれも有意に低下した(p<0.05)。仙骨部においてはどの測定値も有意差がみられなかった。歩行周期時間,CV,RMSも有意な差がみられなかった。
【結論】
本研究では二重課題によって,第6胸椎部では左右幅および水平面軌跡長の有意な低下がみられたが,仙骨部の移動量には変化がみられなかった。このことから,健常者において二重課題を与えると骨盤の動きに変化はみられないが,上部体幹の動きは抑制して歩行していることが考えられた。よって,骨盤と上部体幹が異なる変化をする可能性があることから,骨盤と胸椎部の両方の評価の重要性が示唆された。転倒リスクのある高齢者では二重課題を与えるとバランスや歩容に支障をきたすことから,小型加速度計を用いて2か所で計測することで,より詳細な歩行評価が可能になると考えられた。