第52回日本理学療法学術大会

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日本予防理学療法学会 » ポスター発表

[P-YB-25] ポスター(予防)P25

2017年5月14日(日) 11:40 〜 12:40 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本予防理学療法学会

[P-YB-25-2] 専業主婦における座業時間と健康関連QOL改善方法に関するランダム化比較試験による検証

北川 智美1,2, 樋口 由美1, 藤堂 恵美子1, 今岡 真和3, 上田 哲也1, 安藤 卓1, 高尾 耕平1, 村上 達典1 (1.大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科, 2.四條畷学園大学リハビリテーション学部, 3.国立長寿医療研究センター予防老年学研究部)

キーワード:専業主婦, 座業時間, 健康関連QOL

【はじめに,目的】近年,理学療法士の活動は地域住民の健康増進にまで拡大している。健康増進対策の一つに身体活動量の増加が挙げられるが,最近は身体活動量の中でも座業が注目されている。先行研究では,座業時間短縮と良好な健康状態との関連とともに,個別指導や活動量計を用いた座業短縮介入が報告されている。また,地域住民の中でも,特に健診の義務がない専業主婦は,積極的な対策がとられづらい。専業主婦は家族や地域活動により健康対策に充てる時間が制限される。そこで本研究は,子育て世代の専業主婦に対して3種類の座業時間短縮指導を行い,最長座業時間と健康関連QOLの変化を比較,検討することを目的とした。

【方法】20代~40代の健常な専業主婦48名(平均38.0±4.5歳)を対象とした。対象者はランダムにコントロール群(以下,Co群),自己フィードバック群(以下,FB群)と個別指導群(以下,FF群)の16名ずつの3群に分けた。対象者には1週間通常の生活をさせた後,3群ともパンフレットを用いて健康に対する座業の悪影響を説明した。加えてFB群とFF群に,2週目にスマートフォンのアプリケーションを用いて自己フィードバックを行うよう指導した。さらにFF群には,1週目の生活を振り返り改善を目指す個別指導を行った。調査方法は,全対象者に活動量計を装着して計2週間生活させ,介入前の最長座業時間は1週目の値,介入後の最長座業時間は2週目の値を計測した。健康関連QOLは,SF-8を用いて,介入前の評価は1週目の終わりに,介入後の評価は2週目の終わりに評価した。統計学的分析は,最長座業時間,SF-8の項目である身体的サマリースコア(以下,PCS)と精神的サマリースコア(以下,MCS)について分析した。介入による変化を比較するため,介入前後と介入方法を要因とした二元配置分散分析を行い,事後比較はBonferroni補正によるt検定を行った。統計学的有意水準は5%未満とした。

【結果】対象者に脱落者はなかった。最長座業時間の介入前後の値は,Co群88.4±17.1分→79.3±17.3分,FB群76.5±11.4分→75.3±20.3分,FF群96.7±28.3分→78.8±23.4分であった。SF-8は,Co群PCS47.5±9.4→49.3±7.1,MCS46.3±6.7→50.5±5.2,FB群PCS48.2±4.4→49.8±6.9,MCS48.2±6.4→49.4±6.9,FF群PCS51.3±5.0→48.9±8.8,MCS48.7±6.0→51.2±4.0であった。二元配置分散分析の結果,交互作用は認められず,最長座業時間とMCSの介入前後の主効果のみ有意差が認められた。事後分析の結果,介入によりCo群のMCSが有意に向上,FF群の最長座業時間が有意に短縮していた。

【結論】3種類の指導のうち,健康関連QOLはパンフレットのみの指導にて向上し,加えて具体的な個別指導にて座業時間短縮がみられた。専業主婦の健康関連QOLは簡便な指導のみで改善するが,座業時間短縮にはより具体的な個別指導が必要であった。