第52回日本理学療法学術大会

講演情報

日本予防理学療法学会企画 » 教育講演2

[YB-3] 教育講演2 内部疾患におけるフレイル対策

2017年5月13日(土) 15:30 〜 16:30 A2会場 (幕張メッセ国際会議場 国際会議室)

司会:井澤 和大(神戸大学生命・医学系保健学域)

日本予防理学療法学会企画

[YB-3-1] 慢性腎臓病患者の重症化予防とフレイル対策

平木 幸治 (聖マリアンナ医科大学病院リハビリテーション部)

本邦の透析患者数は年々増加しており,その高額な医療費が問題となっている。この透析導入の原因疾患の第1位は糖尿病腎症であり,40%以上の高い比率を占めている。これまでは糖尿病腎症患者に対する運動療法は,運動による腎血流量の低下や尿蛋白排泄量の増加を誘発することで,さらに腎機能が悪化するのではないだろうかと懸念され,“制限”をするなど積極的には勧められていなかった。しかし,最近では慢性腎臓病(CKD)患者に対する運動療法の安全性や有効性が報告されるようになり,その治療法の一つとして運動療法が推奨されるようになってきた。そして,平成28年度の診療報酬改定により糖尿病透析予防指導管理料の一環として推算糸球体濾過量30ml/分未満の糖尿病腎症患者に対する運動指導料の加算(腎不全期患者指導加算 月1回100点)が認められるようになった。今回の診療報酬の改定は,運動療法により糖尿病腎症患者の重症化予防を期待され新設されたものである。
次に,CKD患者はフレイルに対する問題も注目されている。最近の観察研究では,CKD患者の身体機能が低い者ほど生命予後が不良となることが示されている(Roshanravan,2013)。我々は,外来通院中の保存期CKD患者を対象に身体機能指標(握力,膝伸展筋力,バランス機能,最大歩行速度)をCKDステージ別に比較検討した(Hiraki,2013)。その結果,すべての身体機能指標はステージの進行に伴い低下していた。特に,高齢者においてはサルコペニアの基準を満たす症例が多く存在していた。以上より,我々は,すでに高度な身体機能低下を認める透析期ではなく,保存期の段階から運動介入することでCKD患者の身体機能低下を予防し,かつADLやQOLを維持することが必要と考えている。
本教育講演では,CKD患者の重症化予防とフレイル対策としての運動療法に主眼を置き述べる。