第6回日本地域理学療法学会学術大会

講演情報

一般口述

訪問・通所1

[O] 一般口述8

2019年12月14日(土) 17:40 〜 18:40 第2会場 (東館2階 セミナー室)

座長:桑山 浩明(介護老人保健施設 ローランド 訪問リハ)

[O-044] 心身機能と活動参加の乖離を是正するために身体活動量のフィードバックが有効であった訪問リハビリテーション事例

*壹岐 伸弥1、平田 康介1、石垣 智也1,2、尾川 達也3、川口 琢也1 (1. 川口脳神経外科リハビリクリニック、2. 名古屋学院大学リハビリテーション学部理学療法学科、3. 西大和リハビリテーション病院リハビリテーション部)

キーワード:身体活動量、訪問リハビリテーション、歩行自己効力感

【はじめに・目的】要介護高齢者の多くは,心身機能障害と生活に対する低い自己効力感を併せ持っている。訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)では心身機能だけでなく,生活機能全体の維持や向上を図る必要があるため,過小評価している自己効力感を是正することも必要である。そのために,身体活動量計を用いたフィードバック(Feedback:以下,FB)も有効となる可能性がある。これは,生活で「している」身体活動状況を定量的に評価できることから,機能と活動参加の両面を説明する根拠となるためである。本報告の目的は,心身機能と活動参加に乖離を示す訪問リハ利用者の自己効力感の向上に対し,身体活動量のFBを用いた介入が有効であるかを事例から考察することである。【方法】症例は自宅にて訪問リハを利用している70歳代の女性。認知機能に問題はないが腰部脊柱管狭窄症術後による機能障害から,歩行障害(屋内両T字杖歩行)と右臀部に疼痛を呈していた。両T字杖を使用した2ステップテストは2ステップ値0.61,Frenchay Activities Index(以下,FAI)10点,痛みや身体機能低下に対する主訴はあったものの,屋内家事は行えており,自主練習(エルゴメータや機能練習)の遵守度も良好であった。また,25ヵ月間の訪問リハ経過において,身体機能の向上を認めており,定期的な買い物による外出がリハの目標であることを確認していた。しかし,症例からは「少しは良くなっているけど,いつお尻折れするか分からないし,痛くなるかもしれないから外を歩くのは怖い。」と低い自己効力感を示し,良好な健康行動の実施や身体機能の改善の経過に反し,活動参加の向上が伴わない状況にあった。この際,身体活動量計(Active style Pro HJA-750C,オムロンヘルスケア社)を用いて身体活動量を測定したところ,要支援者のサンプルデータ(n=34)と比較して,過度に低い身体活動量ではなかった(軽強度活動:標準値297.5±108.6分/日,測定値242分/日)。そのため,身体機能に対して十分に活動できていることのFBを行うことによって,自己効力感を向上させることで,身体機能と活動参加との乖離を是正するように関わった。【結果】4ヶ月後には軽強度活動が248分/日,T字杖を使用した2ステップ値0.48,FAI 11点(屋外歩行が向上)となり,屋内T字杖歩行が可能となった。さらに,1年後には軽強度活動が320分/日へと向上し,T字杖を使用した2ステップ値0.63,FAI 13点(買い物と屋外歩行が向上)となり,症例からは「返って1本杖の方が歩きやすい。」と低い自己効力感が改善し,生活場面でも屋外T字杖歩行での買い物が可能となった。【結論】身体機能から生活機能へとアプローチする際,自己効力感を考慮することが重要である。この際,身体活動量のFBを用いた自己効力感の向上は,身体機能と活動参加の乖離を是正することに有効であるといえる。

【倫理的配慮、説明と同意】
本発表に対して,症例と家族には十分な説明を行い,同意を得ている。