第6回日本地域理学療法学会学術大会

講演情報

一般口述

老年学4

[O] 一般口述11

2019年12月15日(日) 10:40 〜 11:40 第2会場 (東館2階 セミナー室)

座長:得丸 敬三(佛教大学 保健医療技術学部理学療法学科)

[O-064] ロコモティブシンドロームに対する段階的ステッピング運動の効果

*畠中 健二1、駒場 郁子1、田中 則子2、福原 徹太郎3、丸山 貴資3 (1. 八戸の里病院 リハビリテーション科、2. 大阪電気通信大学医療福祉工学部 理学療法士学科、3. 八戸の里病院 整形外科)

キーワード:ロコモティブシンドローム、歩行速度、段階的ステッピング運動

【はじめに】
歩くことは、われわれが日常的に反復している代表的な動作の一つであるが、高齢者の場合は歩行速度の低下や歩幅の減少など、移動時の歩調の不安定さが日常生活の活動範囲の制限をきたす場合が多い。ロコモティブシンドロームに代表される歩行機能の低下は、介護問題に直結する可能性が高いため、比較的早期からレジスタンス要素を取り入れた運動介入を行うことが必要である。
そこで我々は地域在住高齢女性に対しロコモチェックを行い、ロコモ該当者に歩行速度と2ステップ距離の延長を目的とした、段階的に重錘負荷条件を上げてステッピング動作を行う、段階的ステッピング運動を行い歩行機能とロコモティブシンドロームに関連する運動要素の改善を認めたので報告する。
【対象と方法】
ロコモ度1,2に該当した高齢女性16名(74.5±6.74歳)を対象に段階的ステッピング運動を行った。まず、平行棒内で両側の平行棒を把持し、両足首に重錘を装着して高さ10cm幅40cmのステップ台上に一側下肢を乗せて他側下肢でステップ台を可能な限り前後に速くまたぐ動作を左右10回3セット、週3回、3ヶ月実施した。重錘負荷条件はダイナモメーターで大腿四頭筋筋力を計測した数値の1/10×0.7で算出した値を初期負荷量とし、新Borg scale4を基準に0.5㎏ずつ負荷量を増した。ロコモチェックと運動機能評価は段階的ステッピング運動開始時と終了時に行った。評価項目は1、ロコモ度判定2、10m歩行(最適、最速時間・歩数)3、2ステップテスト4、左右片脚立位時間5、等尺性筋力(左右腸腰筋・大腿四頭筋)を計測し、Wilcoxonの符号付き順位検定を行った。(p<0.05)
【結果】
有意差は、ロコモ度1で10m最速歩行時間(p=0.028)、10m最速歩行歩数(p=0.027)、2ステップテスト(p=0.046) 、右腸腰筋(p=0.026)に、ロコモ度2では、10m最適歩行時間(p=0.005)、最適歩行歩数(p=0.011)、10m最速歩行時間(p=0.005)、最速歩行歩数(p=0.005) 、2ステップテスト(p=0.005)、右大腿四頭筋(p=0.028)に認め、ロコモ度1の10m最適速度と歩数、左右片脚立位時間、左腸腰筋、左右大腿四頭筋と、ロコモ度2の左右片脚立位時間、左右腸腰筋、左大腿四頭筋では有意差を認めなかった。
【結論】
高齢者にとって歩行能力の制限は生活自立範囲の制限や要介護に結びつく危険性が高くなる。段階的ステッピング運動は足部に重錘負荷を用いるレジスタンス要素を取り入れてステップ台を可能な限り速くまたぐ動作を繰り返すことで、抗重力筋と筋の収縮速度に関与する速筋繊維の賦活と神経伝達における筋力発揮を目的としている。3カ月間、この継続した運動をすることで、ロコモ度1、2ともに、高齢女性の10m最速歩行速度と歩数、2ステップ距離が延長し、ロコモ度2では加えて、最適歩行時間と歩数が改善した。今後、3ヶ月以上の継続した運動を行うことで、筋肥大において段階的ステッピング訓練が寄与するか、ロコモに該当しない高齢者も含めて検討したい。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は八戸の里病院倫理委員会の承認(承認番号P00003)を得た上で、全ての対象者に研究の主旨と内容を十分に説明し、研究への参加の有無により不利益が生じないことを説明した後に、書面にて同意を得た。