[P-101] 地域在住虚弱高齢者の身体機能と二重課題遂行能力の関連に関する検討
Keywords:身体機能、二重課題遂行能力、転倒
【はじめに、目的】
二重課題遂行能力と転倒の発生には関連性があることが報告されており、歩行課題に他の課題を付加した時の遂行能力の低下も転倒の危険因子として考えられるようになった。しかしながら、二重課題遂行能力と身体機能との関係について検討されているものは少ない。よって今回、二重課題遂行能力と身体機能との関係を明らかにすることを目的に研究を行った。
【対象】
地域在住高齢者70名(平均年齢79。4±6。6歳)。旧二次予防事業対象者であり、基本チェックリストの運動項目5項目中3項目以上に該当している者であった。除外基準は、測定時に歩行補助具を使用する必要がある者とした。対象者は全員、公共交通機関または自家用車、自転車、徒歩にて二次予防事業実施会場まで来場でき、日常生活上支障となるようなコミュニケーション障害を有しない者であった。
【方法】
5m歩行速度(快適速度・最大速度)、二重課題としてコップ運びまたは計算を付加した状態での歩行速度、片脚立位保持時間、握力、Functional Reach test(以下FRT)、Timed Up and Go test(以下TUG)の測定を行った。統計解析にはIBM SPSS Statistics Ver。23(日本IBM社製)を使用した。各測定項目間の関係性を検討するために、Pearsonの相関係数を算出した。また、年齢による影響を考慮し、年齢を制御変数として偏相関係数を算出した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
二重課題を付加した条件での歩行速度と、5m歩行速度には有意な相関がみとめられた。また、コップを運ぶ課題を付加した二重課題条件の歩行速度とTUGやFR、片脚立位保持時間などバランスを評価する項目間に有意な相関がみとめられた。しかしながら、計算課題を付加した条件の歩行速度とTUGには有意な相関がみとめられたが、FRや片脚立位保持時間との間には有意な相関はみとめられなかった。コップを運ぶ課題を付加した二重課題条件の歩行速度と計算課題を付加した条件の歩行速度との間にも有意な相関がみとめられた。
【結論】
二重課題は測定のみではなく、トレーニング方法としても使用されているが、その際に同じ感覚モダリティの二重課題であれば転移効果は生じるが、認知課題と運動課題といった課題内容が変わると転移効果が生じないとする報告がある。この結果は、二重課題は副課題によって異なる特性があり、認知課題を付加しての運動とレーニングを行えば、認知課題を付加した状態での運動パフォーマンスが向上するが、運動課題を付加した状態での運動パフォーマンスは向上しないことを示している。よって、今回の結果も副課題とする課題が認知課題であるか運動課題であるかという違いがある場合、そのパフォーマンスの良否に関わる要素が異なることを示していると考える。
【倫理的配慮、説明と同意】
研究の実施にあたっては、ヘルシンキ宣言に基づき、つくば国際大学倫理委員会からの承認を得た。また、対象者には研究の目的、方法、個人情報の取り扱い等について口頭と文書にて説明し、文書にて同意を得た。
二重課題遂行能力と転倒の発生には関連性があることが報告されており、歩行課題に他の課題を付加した時の遂行能力の低下も転倒の危険因子として考えられるようになった。しかしながら、二重課題遂行能力と身体機能との関係について検討されているものは少ない。よって今回、二重課題遂行能力と身体機能との関係を明らかにすることを目的に研究を行った。
【対象】
地域在住高齢者70名(平均年齢79。4±6。6歳)。旧二次予防事業対象者であり、基本チェックリストの運動項目5項目中3項目以上に該当している者であった。除外基準は、測定時に歩行補助具を使用する必要がある者とした。対象者は全員、公共交通機関または自家用車、自転車、徒歩にて二次予防事業実施会場まで来場でき、日常生活上支障となるようなコミュニケーション障害を有しない者であった。
【方法】
5m歩行速度(快適速度・最大速度)、二重課題としてコップ運びまたは計算を付加した状態での歩行速度、片脚立位保持時間、握力、Functional Reach test(以下FRT)、Timed Up and Go test(以下TUG)の測定を行った。統計解析にはIBM SPSS Statistics Ver。23(日本IBM社製)を使用した。各測定項目間の関係性を検討するために、Pearsonの相関係数を算出した。また、年齢による影響を考慮し、年齢を制御変数として偏相関係数を算出した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
二重課題を付加した条件での歩行速度と、5m歩行速度には有意な相関がみとめられた。また、コップを運ぶ課題を付加した二重課題条件の歩行速度とTUGやFR、片脚立位保持時間などバランスを評価する項目間に有意な相関がみとめられた。しかしながら、計算課題を付加した条件の歩行速度とTUGには有意な相関がみとめられたが、FRや片脚立位保持時間との間には有意な相関はみとめられなかった。コップを運ぶ課題を付加した二重課題条件の歩行速度と計算課題を付加した条件の歩行速度との間にも有意な相関がみとめられた。
【結論】
二重課題は測定のみではなく、トレーニング方法としても使用されているが、その際に同じ感覚モダリティの二重課題であれば転移効果は生じるが、認知課題と運動課題といった課題内容が変わると転移効果が生じないとする報告がある。この結果は、二重課題は副課題によって異なる特性があり、認知課題を付加しての運動とレーニングを行えば、認知課題を付加した状態での運動パフォーマンスが向上するが、運動課題を付加した状態での運動パフォーマンスは向上しないことを示している。よって、今回の結果も副課題とする課題が認知課題であるか運動課題であるかという違いがある場合、そのパフォーマンスの良否に関わる要素が異なることを示していると考える。
【倫理的配慮、説明と同意】
研究の実施にあたっては、ヘルシンキ宣言に基づき、つくば国際大学倫理委員会からの承認を得た。また、対象者には研究の目的、方法、個人情報の取り扱い等について口頭と文書にて説明し、文書にて同意を得た。