2020年日本表面真空学会学術講演会

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[C8] 北海道大学触媒科学研究所電子トラップ研究コンソーシアム

北海道大学触媒科学研究所電子トラップ研究コンソーシアム

 これまで不可能だった金属酸化物などの半導体材料の同定を可能にする「電子トラップ密度のエネルギー分布(ERDT)」を測定するために新規に開発された逆二重励起光音響分光法(RDB-PAS)は,ほとんどの金属酸化物や半導体材料がもつ電子トラップについて,粉末や薄膜の形状のまま,試料のERDTを非破壊で見積ることができます.ERDTは粉末のおもに表面構造を反映し,粉末の製造ロットや保管条件のすこしのちがいをも反映する半導体材料の「指紋」です.これをつかって,固体材料を特定する,すなわち同定や,精密な品質管理が可能になります.
 さまざまな固体材料について検討したところ,半導体に分類される金属酸化物や窒化炭素(C3N4)などが,電子をうけとる空の準位としての電子トラップをもち,そのエネルギー分布であるERDTをRDB-PASで測定できることがあきらかになっています.おなじ装置で測定するバンドギャップから伝導帯下端エネルギー(CBB)をもとめ,ERDTとおなじく価電子帯上端(VBT)を基準としてプロットしたERDT/CBBパターンが個々の材料についてユニークな指紋となります.多数の市販酸化チタンをつかって検討したところ,電子トラップの総密度は,比表面積とともに増加する傾向をしめすことから,多くの電子トラップが表面に存在することが示唆されました.総密度は表面のサイズを反映し,CBBはバルクの結晶構造を反映しますが,ERDTパターンはおなじ結晶型で類似した比表面積のものでも大きく異なっていました.これはERDTパターンがおもに表面構造を反映することを意味しています.2種類の市販酸化チタンの組合せについて,(1)ERDTパターン形状,(2)総密度および(3)CBBのそれぞれについての一致度を0~1の数値としてもとめ,3つの一致度をかけ合わせた「全体の一致度」を算出すると,0.9以上の一致度のものは,光触媒活性をはじめとして種々の特性・物性がほぼおなじでした.つまり,ERDT/CBBパターンによって「同定」できたということです.
 おなじ工程で製造したのに,おなじメーカーからおなじコード名のものを購入したのに,つかってみると性能や特性にちがいがあることを経験したことがない人はいないと思います.どのような分析手段でもおなじに見えるのは,これまで「表面構造をマクロ測定する」手段がなかったからです.RDB-PASをつかうと「表面構造だけが異なる試料」も見分けがつきます.
 「ものは試し」.「おなじように見えるけどちがう試料」について測定してみませんか.お問合せをお待ちしています.
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