一般社団法人レーザー学会学術講演会第44回年次大会

50周年記念特別講演会

1. 開催日時,場所

「レーザーが拓く未来社会 -レーザー学会の新たな50年に向けて-」
  2024年1月16日(火) 13時ー17時
 東京国際交流会館プラザ平成 国際交流会議場
  (新交通ゆりかもめ東京国際クルーズターミナル駅から徒歩3分)

 *聴講するには、年次大会へのオンラインでの参加登録が必要です.
 

2. 50周年記念特別講演会 プログラム

 13:00-13:05   主催者挨拶
           久間 和生 レーザー学会会長

 13:05-13:45   基調講演 
  科学技術とともに実現するインクルシーブな未来社会にむけて
           浅川 智恵子 日本科学未来館館長,IBMフェロー

 13:45-14:30   特別講演 
  深宇宙を探るレーザー ~レーザー干渉計型重力波望遠鏡で探る宇宙~
           梶田 隆章 東京大学教授

 14:30-15:15   特別講演 
  世界を繋ぐ・観る:面発光レーザーが変える
           伊賀 健一 東京工業大学栄誉教授,元学長

 休憩

 15:30-16:15   特別講演 
  窒化物系レーザーダイオードの研究開発と社会実装への道のり
           天野 浩 名古屋大学教授

 16:15-17:00   特別講演 
  光量子コンピュータが拓く未来
           武田 俊太郎 東京大学准教授
 



浅川 智恵子 先生日本科学未来館館長,IBMフェロー
講演タイトル
科学技術とともに実現するインクルシーブな未来社会にむけて

講演要旨
視覚障害者の社会参画を促進する上での情報へのアクセスと、単独での移動という課題について、視覚障害をもった研究者という立場からどう取り組んできたのかについて振り返るとともに、現在開発しているナビゲーションロボットAIスーツケースを通して考えます。さらに、こうした新たな技術を活かしインクルーシブな社会を実現するために、科学技術が果たすべき役割と社会がどう向き合うべきかについて考えます。

略歴
小学校時代のプールでのけがが元で、14歳の時に失明。1985年に日本アイ・ビー・エム株式会社東京基礎研究所に入社。80年代には点字のデジタル化システムを開発し、90年代には世界初の実用的な音声ブラウザを開発し、視覚障害者の情報アクセシビリティの向上に取り組んできた。現在はAIやロボティクス技術を応用し、視覚障害者の移動のアクセシビリティ向上に取り組んでいる。2017年には視覚障害者のための屋内ナビゲーションシステムを公開し、2020年には視覚障害者のためのナビゲーションロボット「AIスーツケース」を発表した。2021年4月から日本科学未来館 館長を兼任。

梶田 隆章 先生東京大学教授

講演タイトル

深宇宙を探るレーザー
~レーザー干渉計型重力波望遠鏡で探る宇宙~

講演要旨
重力波はアインシュタインが予言した時空の波です。その重力波の観測には非常に高精度のレーザー干渉計が使われます。その技術について述べると共に、重力波の観測によって宇宙の何を明らかにしたいのか、また日本で現在進めているKAGRAと呼ばれる重力波プロジェクトについてお話しします。

略歴
1986年 東京大学大学院理学系研究科物理学専門課程博士課程修了
1986年 理学博士(東京大学)
1986年 東京大学理学部附属素粒子物理国際センター助手
1988年 東京大学宇宙線研究所助手
1992年 東京大学宇宙線研究所助教授
1999年 東京大学宇宙線研究所教授、東京大学宇宙線研究所附属宇宙ニュートリノ観測情報融合センター長(2016年3月まで)
2008年 東京大学宇宙線研究所長(2022年3月まで)
2015年 - ノーベル物理学賞 受賞
2016年 - 東京大学特別栄誉教授
2017年 - 東京大学卓越教授、第24期日本学術会議会員(2023年9月まで)
2020年 - 第25期日本学術会議会長(2023年9月まで)


伊賀 健一 先生東京工業大学栄誉教授,元学長)

講演タイトル
世界を繋ぐ・観る:面発光レーザーが変える

講演要旨
■本講演では
最近出版した『面発光レーザーが輝く』(第3版2刷]を元に,面発光レーザーの発明から最近の発展までをお話します。
■面発光レーザーとは?
面発光レーザー(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)とは,半導体レーザーの一つで、1977年に講演者によって発明されました。半導体基板に対して垂直に光が共振し、図表面から光が出るのでこのように名付けました。
このレーザーは,シリコン大規模集積回路(一般に“半導体”と呼ばれている)のように,一貫プロセスで大量生産が可能です。大きさも通常の半導体レーザーの1桁から2桁ほど小さく出来、消費電力の大幅な低減が可能です。また、2次元アレー状の特徴を活かした並列処理を可能にします。
応用としては,LAN,コンピュータ用のマウス,レーザープリンター,スマートフォンにおける顔認証,レーザーレーダー,OCT,各種センサーなど広く用いられるようになりました。
■面発光レーザーが輝きを:
産業的にも急成長期を迎えています。IoT(Internet of Things)技術からAI(人工知能)技術の物理層を支える光源としてその動向に注目が集まっているのです。デバイスの売り上げも2025年には5000億円に達すると予測されています。
■レーザーと社会基盤
レーザーの登場以降に発展してきた光エレクトロニクスが,AI時代の社会インフラ構築の基盤に。
■大学における人材育成,多様性,SDGsなど


略歴
1963年東京工業大学理工学部卒業,1968年同大学院博士課程修了(工学博士)。同年より,東工大精密工学研究所に助手,1973年助教授,1984年教授。面発光レーザー,微小光学の研究に従事。1979-1980年ベル研究所客員。2001年東工大名誉教授。2001-2007年日本学術振興会理事,2007-2012年東工大・学長。2013-2015年一橋大学監事。2022年東工大栄誉教授。
レーザー学会フェロー,応用物理学会フェロー/微小光学研究会代表。電子情報通信学会名誉員・フェロー・会長(2002年度)。IEEE Life Fellow, NAE 外国人会員,OPTICA Fellow。
紫緩褒章,東レ科学賞,市村学術賞(功績賞),朝日賞,藤原賞,C&C賞など。2013年フランクリン賞(ゴールドメダル・バウワー賞),2018年瑞宝重光章。2021年IEEEエジソンメダル,2022年文化功労者。趣味はコントラバス演奏。


天野 浩 先生(名古屋大学教授)

講演タイトル
窒化物系レーザーダイオードの研究開発と社会実装への道のり

講演要旨
窒化物系レーザーダイオードは、半導体を用いたコヒーレント光源の短波長化の点で最先端の研究開発である。
従来の半導体技術では高正孔濃度p型クラッド層が出来ないため殆ど不可能と思われていた深紫外レーザーダイオードが、窒化物特有の内部分極を利用してp型層とし、2019年室温発振に至った。
既に連続発振も達成し、出力は日々向上している。本講演では青色レーザーダイオードの開発から深紫外レーザーダイオードまでの開発を概説し、併せてこれからの短波長レーザーダイオードの開発の方向性を議論する。


略歴
1988年4月 名古屋大学工学部助手、1992年4月 名城大学理工学部講師、助教授を経て2002年4月 名城大学理工学部教授。2010年4月 名古屋大学大学院工学研究科教授。2015年10月 名古屋大学未来材料・システム研究所未来エレクトロニクス集積研究センター長・教授に就任。
2014年、文化功労者顕彰、文化勲章受章。また、故赤﨑勇博士、中村修二カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授と共に「高輝度、省エネルギーの白色光源を可能とした高効率青色発光ダイオードの発明」にて2014年ノーベル物理学賞を受賞した。現在は、名古屋大学において高効率パワー半導体など新たな省エネルギーデバイスの創成に向けた研究を進めている。


武田 俊太郎 先生東京大学准教授)

講演タイトル

光量子コンピュータが拓く未来

講演要旨
次世代の超高速コンピュータとして注目が集まる量子コンピュータ。現在、世界各国で多彩な方式で量子コンピュータ開発が進められる中、光を用いた量子コンピュータが異色のアプローチで躍進している。2020 年には中国が、ある特定の計算に限られるものの、「最先端のスーパーコンピュータで6億年かかる計算を光量子コンピュータが200秒で解いた」と発表し、大きな話題を呼んだ。光量子コンピュータは、日本も独自のアプローチで世界最前線にいる分野である。本講演では、量子コンピュータの仕組みや研究動向を紹介した上で、その実用化を目指して我々が独自に開発を進める日本発の光量子コンピュータ方式について紹介する。

略歴
1987年東京生まれ。2014年に東京大学大学院工学系研究科博士課程修了後、分子科学研究所特任助教に着任し、2016年より同助教。2017年に東京大学大学院工学研究科助教に着任し、同特任講師を経て、2019年より現職。専門は量子光学・量子情報科学。これまで光を用いたさまざまな量子技術の研究に関わっており、現在は独自方式の光量子コンピュータ開発に取り組んでいる。主な受賞歴は、東京大学総長賞、日本物理学会若手奨励賞、文部科学大臣表彰若手科学者賞、MITテクノロジーレビュー日本版Innovators Under 35 Japan、丸文学術賞など。主な著書に、「量子コンピュータが本当にわかる!」(技術評論社、2020年)、「新版 量子光学と量子情報科学」(サイエンス社、2020年)など。