第46回日本神経科学大会

セッション情報

ランチョンセミナー

[1LS04] パーキンソン病の診断・治療の新時代に向けて

2023年8月1日(火) 11:55 〜 12:45 第4会場 (桜1)

司会:小林 和人(福島県立医科大学 医学部 附属 生体情報伝達研究所 生体機能研究部門 教授)

共催:アッヴィ合同会社

超高齢社会に突入した我が国では,高齢者が総人口の1/4以上を占めるに至っているばかりか,75歳以上の後期高齢者の割合も 1/8 以上を占めるに至っている。この高齢化はさらに進行し、2050年には後期高齢者の割合も1/4に到達することが予測されている。今後、平均寿命が延びるにつれてこの差が拡大する可能性もあり、健康上の問題だけではなく、医療費や介護費の増加による家計へのさらなる影響も懸念されている。脳神経内科医が担当する多くの神経疾患は加齢が重要な危険因子であることから、脳神経内科の役割の重要性が増すことは間違いない。
パーキンソン病もまた加齢が重要な因子であり、依然原因は明らかにされていない。1961年にレボドパ静注治療導入以来、対症治療としてレボドパはゴールドスタンダードである。多くの補助剤が開発されたにも拘わらず、依然疾患修飾療法の開発は遅れていると言わざるを得ない。1817年にJames Parkinson が「Shaking palsy」を報告して、まもなく206年目を迎える。1888年にはCharcotがParkinsonをたたえ、症状に筋固縮を加えて、Parkinson病 (PD) と名付けた。その後、1919年にFrederic H. Lewyによる黒質Lewy小体の発見、1960年に佐野、Ehringerらによる東西で同時発見されたドパミン欠乏、それに基づく治療薬 Levodopaの導入、1983年にMPTP誘発性パーキンソニズムの発見があり、孤発型PDにおけるミトコンドリア機能低下に繋がったという視点からブレークスルーとなった。1997年に家族性Parkinson病 PARK1(α-synuclein)原因遺伝子の発見、翌年我々のグループからPARK2(parkin)原因遺伝子の発見と1990年以降は遺伝性PD研究の知見には枚挙に遑がない。更に単一遺伝子異常に伴う遺伝性PDは、現時点でPark1-24まで同定されている。高齢社会を迎え、今後PDの発症者が益々増加することが予想され、2030年には、世界で3000万に達すると言われており、その病態解明は喫緊の課題と言える。更に遺伝性PDの発見により若年発症のPDにも明らかにあり、小児神経との連携も重要になっている。神経学は日々進化を遂げており、PD治療1つを取り上げても、この3年間で新薬が数種類上市されている。最も匙加減が必要な神経疾患であり、薬の種類が増えた分、匙加減がより複雑化したともいえる。運動症状は今なお、治療のコアであるが、Levodopa投与やDopamine agonist、MAO-B阻害剤、COMT阻害剤、抗コリン剤、そしてアデノシンA2a受容体拮抗剤ないし、Levodopaの併用をいかなるときに行うかが課題となっている。更にはデバイス治療の開発が進んでおり、運動症状の長期予後は改善している。近未来的治療法としては細胞移植療法や遺伝子治療に大きな期待がかかっているが、進行阻止可能なDisease modifying therapyこそ理想的な治療法として期待される。この治療法の開発には、根本原因の解明が不可欠であることは間違いない。本講演では、PDの病態解明から、臨床データ、そして我々チームが見出した血中の異常α-シヌクレインシードについて解説したい。

×

認証

×

要旨・抄録、PDFの閲覧には参加者用アカウントでのログインが必要です。参加者ログイン後に閲覧・ダウンロードできます。
» 参加者用ログイン