日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[A] 共生微生物

2024年3月31日(日) 09:00 〜 11:45 A会場 (橘)

11:30 〜 11:45

[A-45] パートナーの置換と進化:クリオオアブラムシ-Buchnera-Serratiaの複合共生系

◯野崎 友成1,2、小林 裕樹1、重信 秀治1,2 (1. 基礎生物学研究所、2. 総合研究大学)

多くの昆虫が微生物との共生関係を結んでいる一方で、これらの関係は動的であることも示唆されている。いくつかの系統で、長い時間をかけて共進化・代謝レベルで統合化した共生者でさえも新規の共生微生物へと置換された例が知られている。ただし、共生関係が変化する瞬間を捉えることは難しく、事例の蓄積は共生関係の進化史を理解するうえで依然重要である。本研究では、アブラムシ特有の細菌Buchneraに加え、Serratiaを体内に保有するクリオオアブラムシLachnus tropicalisの共生系を記載する。まず、このSerratia (SLt) が、Buchnera (BLt) と同様にアブラムシ共生ホスト細胞内に局在することと、垂直伝達することを示した。次に共生細菌のゲノム解析から、BLt (0.43Mb) とSLt (2.88Mb) のゲノムが協調的に昆虫に必須なアミノ酸および補酵素を合成できることを見出した。Lachnus属における祖先状態を考慮すると、本属の種分化過程でSerratia clade Bからclade Aへの置換が生じた可能性が高い。