日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[B] 生態学・行動学

2024年3月31日(日) 13:30 〜 16:00 B会場 (萩)

14:45 〜 15:00

[B-53] アリ植物Macaranga bancanaの共生アリにおける葉上の個体数に対する宿主植物の大きさの影響

◯川越 葉澄1、市岡 孝朗1、Meleng Paulus2、Gumal Melvin3,4、清水 加耶5 (1. 京都大学、2. サラワク州森林局、3. サラワク州森林公社、4. スウィンバーン工科大学、5. 島根大学)

オオバギ属のアリ植物は、特定のアリ種を中空の茎の内部に営巣させるとともに、新葉や托葉などに栄養物質(Food body)を生産してそれらの共生アリに提供している。一方、共生アリは、巣場所となった宿主植物を植食者から守っている。東南アジアの熱帯雨林に生息するオオバギ属のアリ植物であるMacaranga bancanaでは、植物が生産するFood bodyと植物の地上部バイオマスの比率が、植物が成長するにつれて減少することが分かっている。この現象から、宿主植物が成長するにつれて、葉1枚当たりの共生アリの平均個体数が減少するだろうと予測した。そこで本研究では、この予測の真偽を検証するため、ボルネオ島の低地熱帯雨林において、M. bancanaの様々な成長段階における葉表面上の共生アリの個体数を数え、葉1枚当たりのアリの数と宿主植物の大きさの関係を調査した。その結果、葉1枚当たりのアリの数は、宿主植物のサイズが大きくなるにつれて有意に減少した。また、1枚の葉にいる働きアリの数は、若い葉の方が古い葉よりも有意に多かった。これらの結果から、共生アリによる被食防衛の程度は、宿主植物の大きさと葉齢の増加とともに減少することが示唆された。