日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[C] 社会性昆虫

2024年3月31日(日) 09:00 〜 11:15 C会場 (白橿1)

10:00 〜 10:15

[C-42] ミツバチの門番がもつ燃料と対スズメバチ防衛戦略の関係:二種間比較

◯原野 健一1、小野 正人1、佐々木 哲彦1 (1. 玉川大学ミツバチ科学研究センター)

ニホンミツバチ(Acj)は、同所性の天敵であるオオスズメバチの偵察蜂を熱蜂球によって殺すことでコロニーを効果的に防衛する。セイヨウミツバチ(Am)も熱蜂球を形成するが、蜂球内温度や温度上昇速度はAcjに比べて低く、オオスズメバチに対する有効なコロニー防衛もできない。発熱には燃料となる糖が不可欠であるため、働き蜂が持つ糖量の違いが2種間の防衛行動の違いと関係している可能性がある。本研究では、働き蜂の保持糖量が種あるいは季節によって異なるかどうかを調べるため、オオスズメバチ襲撃前の7月後半から襲撃が本格化する9月半ばまで、2種のミツバチコロニーから毎週門番を採集し、その蜜胃中の糖量を定量した。糖量は採集日によって有意に異なっていたが、季節進行に伴う明確な増加はなかった。オオスズメバチへの暴露による糖量の増加も確認できなかった。一方、種間差は明確で、Acjの門番はAmの門番よりも有意に多くの糖を保持していた。熱蜂球形成直後に採集した働き蜂でも同様の種間差が見られた。これらの結果から、2種の対スズメバチ防衛戦略の違いについて考察する。